〜第48話 科学ドキュメンタリー〜

アカサカ「さてと……」

杏子「ん、店長、何か見んの?」

アカサカ「ああ。何か今日、イヌHKで面白い番組やるって新聞に載ってたからね」

杏子「ふ〜ん」

アカサカ「お、始まったぞ」

杏子「『医療最前線』ね……」

SGラットバット「ペンギン。そうペンギンです。さてペンギンが、医学の進歩と関係あるとはとても思えませんね。
ところが以外にもあるのです。そりゃもう実に大変あるんです。
例えば、偶発的な現象をきっかけとして、無菌のはずのガラス板の上の菌の存在から、サー・アレクサンダー・フレミングがペニシリンを世界に送りました。
ジェームズ・ワットは台所のヤカンの蓋が吹いているのを眺めていて、蒸気の力に気づいたのでした。
またアルバート・アインシュタインが、単なるバカだったら、相対性理論はバカだったと。この三つの偉大なる前進は、闇の中で行われたのです」

SGラットバット「また、ラザフォードが、実験をしなかったら、原子は分裂しなかった。
またマルコーニが、無線を発明したのも偶然カミさんが里に帰っていたから。
これらの驚異的な進歩は何年間ものたゆまぬ研究なしに有り得たでしょうか? もちろん否です。
だからさっき私が言った偶然の発見と言うのは嘘です。
しかしながら、科学者はこのペンギン達、この滑稽な水かきのあるカエルの様な飛べない鳥が、近い将来、人間の頭脳の研究に何となく貢献するだろうと考えています。
サレラシオ大学、美月咲夜教授」

咲夜「む〜ん。ここサレラシオ大学で、プレダコン・タランス、岡部倫太郎博士、それと私とで、
故・スチューピッド博士が生前に立てられた仮説を研究しています。
それはペンギンは、本質的に人間よりも知能が高いという仮説です」

咲夜「故・スチューピッド博士が最初に気づかれた点は、ペンギンは、人間より脳がずーっと小さいという事です」

咲夜「この事実が、生前の博士の考え方の根底を成し、それは亡くなるまで続きました」

咲夜「さて、その仮説をもう一歩進めまして、ペンギンのサイズを大きくして、人間と同じ大きさにします。
そのうえで、脳の大きさを比較します。その結果は、ペンギンの脳の方が、人間より小さい。しかし、ここが重要です。さっきよりはずーっと大きい」

タランス「ペンギンが人間と同じ大きさの脳を持つには、ペンギンが約22mでなければならないッス」

タランス「どぅっはぁ、でけえ!」

咲夜「この仮説は、『時間の浪費仮説』と呼ばれ、1956年にうっちゃらかされました」

咲夜「ところがです。IQテストでこんな結果が出たのです。ペンギンは、原始的人種と言われるウスキーネ平原のフンドー人よりバ〜カでした。しかしイヌHKのプロデューサーよりはマシ」

咲夜「イヌHKのプロデューサーのIQが、予想よりは高く出た理由は、計算ミスがあったか、ま、バカはバカなりに、なんかズルをやって誤魔化したとしか考えられません」


倫太郎「このIQテストは、ペンギンにとっては、不当な文化的差別だと考えられます。
例えば、ペンギンの教育制度の貧困が、全く考慮されておりません。
もっと公平なテストをするために、研究者チームが、南極で一年半、ペンギンと同様の生活をしたところ、ペンギンよりも……」

倫太郎「早く死にました。あのテストを考えた奴は、みんな、はっ飛ばされて田舎に帰っちまいやんの、これが」

咲夜「そこで私達は、福岡の中洲でテストをする事にしました。何たってほら飲み屋が近いからして」

タランス「次の配列に続く数字は何だスか? 2、4、6……」

ペンギン「ペギャ!」

タランス「“8”って言ったッスか? ……何だスか?」

咲夜「環境の他にも、問題があったのです。言葉の問題です。ペンギンは、日本語を喋れないため、答えが言えない訳です」

咲夜「この問題も、その次の実験の時、ペンギンと、日本語を知らない人間を選んで、その両方に同じ条件で同じ質問をしてみました」

タランス「次の順序の数の続きは? 2、4、6……?」

一同「…………」

タランス「…………」

一同「…………」

タランス「……ハロー?」

咲夜「このテストの結果は明快でした。ペンギンの成績は、日本語を喋れない外人とま〜ったく同じだったのです」

倫太郎「こうなるとイヌHKは、すぐ今のプロデューサーをクビにしたりして。よくあるんだよね、こういうの」

ペンギン「ペギャ!」

SGラットバット「ペンギンの地位も上がりました。まもなく、このペンギン達が、あちこちで重要な地位を占め始めました」

杏子「…………」

杏子「……なあ店長、これってマジ?」

アカサカ「さぁ……。テレビってのは、とかく大袈裟に言ったりするからねぇ」

杏子「それにしても……」

アカサカ「?」

杏子「さっきの一番ちっこい先生……なんか気になるんだよなぁ」

アカサカ「杏子ちゃん達と同じ位の年齢だから?」

杏子「いや、そういうのじゃなくて。何か感じるんだよ」

アカサカ「ふーん……」



〜おしまい〜

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