〜第20話 寄り道をしてもいいじゃないですか〜
〜前回までのあらすじ〜 ※登校中 まどか「マミさん、大丈夫かなぁ……」 さやか「それより、あの転校生に、碧くれはとかいう奴らだよ! もしその時、あたしや杏子がいたら、絶対に好き勝手な事なんて言わせなかったのに……!」 キュゥべえ「まどかがボクと契約してくれたら、マミにも負けない魔法少女になれるよ。そうすれば、あの二人なんて物の数じゃないだろうね」 さやか「こらこら、あたしや杏子がいるんだから。まどかが無理して魔法少女になる必要は無いよ。それとも、あたし達だけじゃ不安?」 マミ「……例え何を言っても、私が鹿目さんを危険な目に遭わせていたって事は、彼女達の言う通りよ。 マミ「心配しないで。ちょっと考えたい事が出来ちゃっただけだから」 まどか(マミさんはああ言ってたけど、やっぱり心配だなぁ……。でも、あの時、ほむらちゃん達……) ほむら「ばっ、バカ! こんな事やってる場合じゃ……」 まどか(あの時のほむらちゃん、マミさんの事をすごく心配してたように見えた……) くれは「今日はいい天気ですねぇ。……あ、そうだ」 くれは「これとこれと……よし、準備完了っと。それじゃあ、行きますか」 Je m'baladais sur l'avenue le coeur ouvert à l'inconnu. くれは「この辺りにしますか」 くれは「やっぱり、こんな日に外で頂くコーヒーは格別ですねぇ。暁美さんも誘えば良かったかなぁ。……でも、この時間だとまだ学校に残ってるかな……」 くれは「ん?」 まどか「あ……」 くれは「こんにちは。鹿目さんじゃないですか」 くれは「学校の帰りですか?」 くれは「ところで、立ち話も何ですし……一緒にコーヒーでもいかがですか? 生憎、ミルクも砂糖も用意してませんが」 くれは「よかったらこれもどうぞ」 まどか「……あの、碧さん」 まどか「くれは……ちゃん。えっと、この間は有難う。マミさんを助けてくれて」 まどか「くれはちゃん、訊いてもいい?」 まどか「あっ、ごめんなさい。答えたくなかった……?」 くれは「〜♪ 〜♪」 まどか「ああ、そうだ! 思い出した。小学生のころ、音楽の授業で聞いた事があったよ! くれはちゃん、歌とか好きなの?」 くれは「では、コホン……」 Tu m'as dit "J'ai rendez-vous dans un sous-sol avec des fous, パチパチパチ ?「くれはちゃんの歌声って、すっごく素敵だよね。歌手になれるんじゃない?」 くれは「…………」 くれは「さて、と。すっかり引き留めてしまってすみません。そろそろ帰らないと、ご両親が心配されるのではないですか?」 くれは「鹿目さん」 くれは「今日、私に会った事は美樹さん達には黙っておいて頂けませんか? 不要なトラブルを招いてしまったとなると、暁美さんに申し訳ないので……」 まどか「くれはちゃん」 まどか「コーヒーとケーキ、ごちそうさまでした。とっても美味しかったよ」 まどか「それじゃ……またね」 くれは「……ふぅ。ほんと、絵に描いたようないい子ですね。暁美さんが命を懸けて守りたいって言うのも、分かる気がします」 くれは「“『それじゃ またね』って手を振って”……か」 戻る
お菓子の魔女との戦いで、危機に陥った巴マミだが、間一髪のところで暁美ほむら・碧くれはの二人に助けられる。
だが、二人はマミに対して辛辣な忠告をするのだった。
さやか「な〜に落ち込んでんのさ! 別にまどかが悪い訳じゃないんだから、元気出しなよ!」
まどか「うん……」
まどか「…………」
まどか「キュゥべえ……」
まどか「さやかちゃん……」
それに、確かにあの時あの二人が現れなければ、私はやられていたわ。だから、ね、鹿目さん。
魔法少女体験コースは、しばらくやめておきましょう。魔法少女になるのも、もう少し考えてからの方がいい……」
まどか「マミさん、私……」
ほむら「今度の魔女は、これまでの奴等とは訳が違う……!」
〜場面転換〜
〜一時間後。〜
(知らない人にも心を開いて通りを歩いていたのさ)
J'avais envie de dire bonjour à n'importe qui
(誰にでもボンジュールと言いたい気持ちで)
N'importe qui et ce fut toi, je t'ai dit n'importe quoi,
(その誰にでもが 君だった 君とは何でも話したよ)
Il suffisait de te parler, pour t'apprivoiser.
(君と親しくなるのにはそれで十分だった)
Aux Champs-Elysées, aux Champs-Elysées
(シャンゼリゼには シャンゼリゼには)
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit,
(晴れていても 雨が降っていても 昼間でも 真夜中でも)
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Elysées
(欲しいものは何でもあるのさ シャンゼリゼには)
まどか「こんにちは、碧さん……」
まどか「う、うん」
くれは「今日は美樹さんと一緒じゃないんですね」
まどか「さやかちゃんは日直の仕事があったから。先に帰っててって。碧さんも、今日はほむらちゃんと一緒じゃないんだね?」
くれは「あはは。別に共闘してるからって、四六時中一緒にいる訳じゃありませんよ」
まどか「それもそっか」
まどか「……うん。頂きます」
まどか「……これって、シャルモンのケーキ?」
くれは「ええ。美味しいと評判でしたので、ためしに買ってみたんです」
まどか「実は私も、ちょっと食べてみたかったんだ。でも高いからなかなか……」
くれは「そうなんですか。それなら丁度良かったですね」
くれは「そんなに畏まらなくても結構ですよ」
まどか「じゃあ……その、『くれはちゃん』って呼んでもいい?」
くれは「ええ。もちろん構いませんよ」
くれは「お礼なら、暁美さんにおっしゃって下さい。あれは暁美さんが言い出した事ですから。『巴マミが死んだら、まどかが悲しむから』ってね」
まどか「ほむらちゃんが?」
くれは「ええ」
まどか「そっか。そうなんだ……」
くれは「答えなくても構わない、というのであれば、どうぞ?」
まどか「その……くれはちゃんやほむらちゃんって、どうしてキュゥべえを狙ってるの?」
くれは「…………」
くれは「……理由言っても、あなた方は信じませんよ」
まどか「そんな。ちゃんと話せば、マミさんだって、さやかちゃんだって、きっと分かってくれるよ!」
くれは「ダメなんですよ。それで暁美さんはすっかり心をすり減らしてしまったんですから」
まどか「ほむらちゃんが?」
くれは「あまり詳しくお話しすると、暁美さんの内面にまで踏み込んだ話になってしまうので、ここでやめておきます。気になるのであれば、鹿目さんご自身の口で暁美さんに訊くべきでしょう」
まどか「うん、わかった……」
〜そして。〜
まどか「その曲なんだったっけ? 聞いた事はあるような気がするんだけど……」
くれは「『オー・シャンゼリゼ』です。陽気な感じが好きなんですよ」
くれは「……ええ、まぁ、嫌いではないです……」
まどか「ちょっと聞いてみたいな」
くれは「ええっ!?」
まどか「ダメかな?」
くれは「……一回だけですよ?」
まどか「うん!」
(君は「陽気な仲間と地下室で会うのよ)
Qui vivent la guitare à la main, du soir au matin".
(一日中ギターを抱えている人よ」と言ったので)
Alors je t'ai accompagnée, on a chanté, on a dansé
(僕もついて行った そして歌って 踊って)
Et l'on n'a même pas pensé à s'embrasser
(抱き合ってキスしようなんて考えもしなかったよ)
Aux Champs-Elysées, aux Champs-Elysées
(シャンゼリゼには シャンゼリゼには)
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit,
(晴れていても 雨が降っていても 昼間でも 真夜中でも)
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Elysées
(欲しいものは何でもあるのさ シャンゼリゼには)
まどか「すっごく素敵! 綺麗な歌声だねぇ」
くれは「恐縮です。人前で歌ったのも久しぶりですよ」
まどか「そうなんだ。もったいないなぁ、折角素敵な歌声なのに……」
まどか「くれはちゃん? どうかしたの?」
くれは「ああ、いえ。ちょっと、昔の事を思い出しただけです」
まどか「……?」
くれは「……ねぇ、鹿目さん。貴女、ご自分に自信を持ちたい、と思って、一度は魔法少女になろうと思ったんでしょう?」
まどか「えっ……どうして……」
くれは「見ていて分かりましたよ。これでも、人を見る目はあるつもりなので」
まどか「…………」
くれは「でも、例え今、得意な事が無くても、きっといつかは自分に自信が持てる時が、誰かの役に立っている、と自分で思える時が来ますよ。
回り道をしても、寄り道をしてもいいじゃないですか。無理に何かを変える必要なんて無いんですよ。
ゲーテいわく、『ただ、自分を信じるのだ。そうすれば、どう生きるべきかが見えてくる』。」
まどか「……ありがとう」
まどか「あっ、そうだね。早めに帰るよ」
まどか「?」
まどか「……うん、分かった……」
くれは「?」
くれは「私の方こそ、楽しい時間を過ごさせて頂きました。有難う御座います」
まどか「えへへ……」
くれは「……はい。いずれまた」
〜おしまい〜