〜第16話 ひだまりに消えた複製画〜

アカサカ「近頃は事件も無いし、平和だねぇ……」

アカサカ「お。ゆのちゃん、いらっしゃい」

アカサカ「珍しいね、今日は宮子ちゃんと一緒じゃないんだ」

ゆの「実は……そのことで店長さんに相談があるんです」

アカサカ「相談?」

〜場面転換〜

イエロー「最近はサレラシオ(この街)も平和だねぇ。ナイトビートがいる限り、犯罪者はこの街じゃ身動きが取れないよ。例え……」

ナイトビート「クライオテックだとしても、ですか?」

イエロー「そう」

ナイトビート「僕はそうは思いませんよ、イエロー」

イエロー「どうして?」

ナイトビート「クライオテックが大人しいのは、きっとまた何か良からぬ事をぶっ企んでいるからですよ」

ピンポーン!

ナイトビート「ほれ、来た」

イエロー「ん?」

アカサカ「……という訳で、ゆのちゃんの助けになって欲しいんだよ、ナイトビート」

ナイトビート「成程。それじゃまず、詳しいお話を聞かせて頂けますかな?」

ゆの「あ、はい。実は二日前、私が実家から帰ってくると、宮ちゃん達がアパートからいなくなってたんです。
最初はみんなで買い物に行ってるのかと思ったんですけど、夜になっても帰ってこなくて……。携帯も繋がらないし……」

イエロー「それで、そのお姉ちゃんの友達は、いつからいなくなってたの?」

ゆの「近所の人に聞いてみたら、一週間くらい前から姿を見てないって……」

イエロー「一週間!」

ナイトビート「ふ〜む……。脅迫状めいた物なんかは?」

ゆの「そういうのは無かったです。私、宮ちゃん達がどこにいるのか不安で……」

アカサカ「なぁ、ナイトビート。何とか力になってやってくれねぇか?」

ナイトビート「しっかと分かりました。調べてみましょう」

ゆの「あ、でも店長さん……。私、そんなにお金持ってなくて……」

ナイトビート「……確かに、私は『プロ』として探偵をやっていますので、タダで依頼をお受けする、という事は出来ません」

アカサカ「まぁ、それはそうかも知れないけどよ……」

イエロー「ナイトビート、それじゃゆのお姉ちゃんがかわいそうだよ」

ゆの「…………」

ナイトビート「ところでゆのさん、実は先日、部屋の模様替えをしましてね。壁がちょっと寂しいかなと思っていたんですよ」

ゆの「?」

ナイトビート「今度、壁に飾る絵を描いてはもらえないでしょうか? 料金は現物支給という事で。構いませんかな?」

ゆの「……ありがとう御座います!」

沙英「…………」

コツ、コツ……

沙英「あ、まずい!」

クライオテック「どうだね、ワシの頼んでおいた絵は出来上がっとるかね?」

沙英「いつまでこんな事させるつもりよ!」

クライオテック「う〜ん、完成も間近だな。ふーむ、素晴らしい。
絵筆のタッチといい、色といい絵具の塗り重ね具合といい、光線の反射具合まで、まさにアルトドルファーの絵その物だ」

スラスト「これなら高く売れるブーン」

クライオテック「余計な事言わんでいい」

スラスト「いてっ!」

クライオテック「君達の才能にワシャ満足しとるよ。これで、ワシのコレクションにも拍がつくというものだ」

沙英「まさか、これを……」

クライオテック「ははは、お前たちは心配する事はない。それから、それが完成したら次の作品に取り掛かってもらう」

ヒロ「待って、約束が違うわ! これでおしまいって……」

ダージガン「あーこれ、つまらんモンやけど……」

ヒロ「……シャルモンのケーキ。……もう、しょうがないわねぇ♪」

宮子「ヒロさーん、あたしにも頂戴」

沙英「ダメだこりゃ……」

沙英「はぁ、誰かが絵の裏に書いておいたメッセージに気づいてくれたらなぁ……」

宮子「沙英さ〜ん、悩んでてもしょうがないって」

沙英「あんたね……」

〜場面転換〜

ダージ(ダージガン)「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! こちらは16世紀に描かれた貴重な絵画! 今回とある収集家から売りに出された一品や!」

ワスピーター(スラスト)「こんな機会、二度と無いブーン! 今回だけの特別販売だブーン!」

ダージ「お、そこの嬢ちゃん達、どないや? 安くしとくで?」

亜矢「有名画家の絵がこんな所でねぇ。何か胡散臭いわねぇ……」

望美「亜矢、何かこの絵が私を呼んでる気がする……」

亜矢「……つまり、私にこの絵を買って欲しいって事?」

望美「ん」

亜矢「そんな事言ってもねぇ……ん?」

イエロー「う〜ん、行き詰まっちゃったね……」

ゆの「…………」

イエロー「ゆのお姉ちゃん、元気出して! きっと何か手がかりが見つかるよ」

ゆの「……うん、ありがとう」

ナイトビート「美術学校の学生三人が誘拐。身代金の要求も無いとなると……おや」

ナイトビート「これはこれは、神楽財閥のお嬢さん。またずいぶん大きな荷物ですね」

亜矢「ああ、丁度良かった。この絵に気になる事があったから、あなた達に見せに行こうと思ってたのよ」

ナイトビート「私たちに?」

亜矢「そこの露店で売ってたのよ。『16世紀に描かれた掘り出し物の絵画』だって。胡散臭いと思ったんだけど、裏に書いてあった言葉が気になって」

ナイトビート「裏に?」

イエロー「『○×番地の△◆ビルで待ってます。きっと見に来て下さい』……?」

ゆの「これ……沙英さんの字だ!」

ナイトビート「亜矢さん、これを売ってた露天商というのは?」

亜矢「ロボットの二人組だったわ。緑色のハチみたいなロボットと、水色のジェット機みたいなロボット。多分、トランスフォーマーね」

ナイトビート「……なるほど、ピッと分かりましたよ。ゆのさん、私達はこの場所に向かいますので、G3警部にこの事を伝えてきてはくれませんか?」

ゆの「は、はい!」

ナイトビート「亜矢さん、貴女方のおかげで、事件は解決しそうです。ありがとさんです」

亜矢「事件……?」

〜場面転換〜

コツ、コツ、コツ、コツ……

沙英「来たわよ」

ガチャ

ダージガン「おーい、あんたら、朝飯やで」

ヒロ「えーい!」

宮子「それっ!」

ゴン!

スラストダージガン「ぐぇぇぇぇぇぇぇぇ……」

沙英「今よ!」

宮子「ゴメンね〜」

スラストダージガン「ボス〜……」

クライオテック「な、なんたる姿!」

スラスト「逃げられたブ〜ン……」

クライオテック「ばかもん! さっさと追いかけろ!」

G3「よーし、ここだ! 突入!」

ダージガン「あ、G3や! スラスト、お前はこのままあいつらを追っかけろ! ワイはボスに知らせて来る!」

スラスト「了解〜」

ダージガン「ボス! 警官たちがごまんと来たで!」

クライオテック「何!? くそ、こうなったら今までの儲けを持って逃げるんだ! 行くぞ!」

ダージガン「へ〜い!」

クライオテック「急げ、急ぐんだよ」

ナイトビート「よほど、重い荷物を持っていると見えますね」

ダージガン「だーっ、ナイトビートや!」

クライオテック「あ、こら、ワシを置いていくな!」

G3「いたぞ、逃がすな!」

ダージガン「わーっ!」

クライオテック「落ち着け、逃げ道はまだたくさんあるよ!」

沙英「あなた達は!?」

ナイトビート「ナイトビートです。ゆのさんの依頼で、君たちを助けに来ました」

ヒロ「まあ」

宮子「ゆのっちの?」

ファンファンファンファン……!

G3「待て――っ!」

クライオテック「くそーっ、毎度毎度しつこいんだよ!」

ナイトビート「いつもながら、警部の仕事熱心さには、ぐったりするほど感心させられます」

イエロー「今回も、ナイトビートの勝利だね」

ナイトビート「いえ……」

イエロー「?」

ナイトビート「本当の勝利者は、彼女たちの友情ですよ」

イエロー「そうだねぇ」



〜おしまい〜

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