〜第13話 悪くは、ないわね〜

タッタッタッタッタ……

ビーコン「こっちに逃げたはずだ! 絶対に逃がすな!」

くれは「……撒いたみたいですね」

ほむら「そうね」

くれは「まったく、いくらワルプルギスの夜に対抗するためだからって、デストロン基地から武器を盗み出そうなんて無謀ですよ。
『ヤ』のつく自由業の方達や、人間の軍施設に侵入するのとはわけが違うんですから……。
エマーソンいわく、『余りに望みを高くして、目前の職業を失うな』ってね」

ほむら「……別に無理して付き合ってくれなんて言ってないわ」

くれは「いえいえ、とことんまでお付き合いしますよ。このままいって、次はグランショッカー基地に忍び込むなんて言い出されたら、
ワルプルギスの夜が来る前にゲームオーバー、なんて事になりかねませんからね」

?「見つけたぞ、子猫ちゃん達!」

ジェットジェネラル「オレ達の基地で盗みを働こうなんて、大した度胸だな、ロリータ(お嬢ちゃん)達。その度胸に免じて……」

ジェットジェネラル「オレが直々にローストにしてやらぁ!」

ほむら「……やるしかないみたいね」

くれは「待って下さい。暁美さん、ちょくちょく時間停止を使って魔力を消費しているでしょう? ここは私に任せて下さい」

ほむら「何か考えでも?」

くれは「ええ。先日巴さんと戦った時に“頂いた”能力(ちから)を試すいい機会です」

スッ……

ズォォォォォ……

チキッ

くれは「有象無象の区別なく、私の弾頭は許しはしない……なんちゃって♪」

ドンッ!

ドガッ! ドゴッ!

ビーコンA「うぎゃっ!」

ビーコンB「ぐわっ!」

ジェットジェネラル「なっ、何!? 銃声は一つだったはずだぞ! どうなってんだ!」

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャッ!

ドガッ! ドギャッ!

ジェットビーコンA「ぐぎゃっ!」

ジェットビーコンB「ぐえっ!」

ジェットジェネラル「くそっ! ビーコン共があっという間に全滅だと……!?」

くれは「名付けて『Der Freischütz(魔弾の射手)』。いかがですか、ジェットジェネラルさん。
これ以上を望むのであれば、今度はあなたの脳天に、500円玉が通る位の覗き穴を開けてさしあげますが?」

ジェットジェネラル「ちっ……」

ジェットジェネラル「しょうがねぇ、今日のところはこれで勘弁してやる! だが覚えてろ!」

バッ

ギガゴゴゴ!

ジェットジェネラル「今度会ったら必ずひき肉にしてやるからな! ジェットジェネラル、アディオス!」

くれは「うわ〜、典型的な小物っぽい捨て台詞ですねぇ……」

くれは「素直に帰って下さって助かりましたね。結局は骨折り損になってしまいましたけれど……」

ほむら「そうね。……それにしても、何回見ても不思議な能力(ちから)ね。一体“何をした”の?」

くれは「魔力とは魂の通貨、意思の銀板。命の取引の媒介物。つまりは“そういう事”です」

ほむら「……答えになってないわよ」


〜その夜〜

ここは、くれはの自宅である。

くれは「大根切って〜 また切って〜♪」

くれは「……あ、そう言えば」

ほむら「……なに?」

くれは「いえ、ちょっと作り過ぎてしまったので、おすそ分けにと思ったのですが。お夕飯、まだですよね?」

ほむら「…………」

くれは「お嫌いですか、ブリ大根?」

ほむら「別にそんな事はないけれど……」

くれは「それは良かった♪」

くれは「ここに置いておきますので、気が向いたら召し上がって下さいな」

ほむら「……それには及ばないわ」

くれは「ダメですよ。暁美さん、もともと病弱な身体を魔力でドーピングしてるようなものでしょう?
きちんとした栄養をとらなきゃいけませんよ。ただでさえほとんど自炊してらっしゃらないみたいですし……」

ほむら「…………」

くれは「エマーソンいわく、『第一の財産は健康である』。そして健康な身体はまず食事から。『医食同源』ですよ。それでは、御機嫌よう♪」

ほむら「……まったく、こんな気遣いいらないのに」

ほむら「でも……」

スッ……

ほむら「人の作った料理を食べるのなんて、どれ位ぶりかしら……」

ほむら「…………悪くは、ないわね」

〜おしまい〜

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