台風上陸阻止作戦



 ムボウデーンの本拠地。
 紫の空間に浮遊する島、『謁見の間』で、デコトランはアクジデントから叱責を受けていた。
 言うまでもなく、一向に進まない地球の暗黒化に関してである。
<デコトランよ、四天王の一人であるお前が、何を手こずっておる……>
 アクジデントの声に、デコトランは身を固くする。
 彼は、アクジデントの言葉の裏に苛立ちが隠されている事を感じ取っていた。
「も、申し訳御座いません、アクジデント様……。次こそは必ず……」
<デコトラン、お前はヒカリアン共の力を侮っているのではないか? 奴らを確実に叩き潰す策を講じよ。良いな>
「ははっ!」
 デコトランはアクジデントに向かって深々と頭を下げる。
 同時にアクジデントの姿が、空間に消え失せた。
 立ち上がったデコトランは、右腕で額に浮かんだ汗をぬぐう。
「ふう……」
 デコトランとしても、これ以上の失敗は避けたいところであった。
 多少ノリが良すぎるところがあるとはいえ、彼はこれでも、ムボウデーンの最高幹部である四天王の一人として、数々の戦いで戦果を上げてきた。
 今回の地球侵略において、真っ先に作戦担当者に選ばれたのも、それらをアクジデントから評価されたからに他ならない。
 そんな彼がここまで長期間苦戦を強いられているのだ。
 焦りが生まれるのも当然と言えば当然と言えた。
「奴らを叩き潰す策……」
 デコトランは手近にあったモニターに目を向ける。
「一つ、強力なコマルダーの材料を探してみるとするか」
 手元のリモコンで、モニターのスイッチを入れた。
 このモニターは、地球のあらゆる情報や電波をキャッチする機能もある。
 そしてちょうど、モニターには南で台風が発生したというニュースが報じられていた。
 凄まじい風が吹き荒れ、視界が覆われるほどの雨が降っている。
 その暴風雨に、デコトランの目は釘付けとなった。
「台風か……」

「台風ねぇ」
 インプレッサは、ピンと来ない顔で言った。
 彼は台風を見た事が無いのだ。
 地球と異なり、常に一定の環境に保たれているヒカリアン星には台風などは存在しないのである。
「そ。台風。かなり大型のやつが、南の方で発生したんだってさ」
 タクヤは今朝のニュースの事をインプレッサに伝えていたところだった。
 ちょうど一つ前の段落で、デコトランが見ていたニュースと同じ物である。
「それってまずいの?」
 まだよく分かっていない様子のインプレッサに、タンクが説明を始めた。
「いいですか、インプレッサ? 台風というのはですね……」

 台風とは、北太平洋西部、北緯五〜二〇度付近に発生する熱帯性低気圧で最大風速毎秒一七メートル以上に発達したものを言います。
 特に夏から秋にかけては暴風雨を伴って大陸沿岸地方に襲来し、大規模な風水害をもたらすことが少なくありません。
 日本では、古くは野の草を吹いて分けるところから野分(のわき、のわけ)といい、『枕草子』などにその表現を見ることが出来ます。
 その後明治時代頃から颶風(ぐふう)と呼ばれるようになりました。
 現在の台風という名は、1956年の同音の漢字による書きかえの制定にともなって、颱風と書かれていたのが台風と書かれるようになったものですが、その由来には諸説があるそうです。
 また、台風が国際分類上、熱帯低気圧をハリケーンやサイクロンと呼ぶ区域に進んだ場合には台風ではなくそれぞれの区域の名称で呼ばれることになります。
 東経180度より東(西経)に進んだ場合、最大風速(1分間平均)が64ノット以上のものはハリケーンと呼ばれ、34ノット以上64ノット未満のものはトロピカルストームと呼ばれています。
 この他、マレー半島以西に進んだ場合はサイクロンと呼ばれる、といった具合です。
 もっとも被害という視点で語られることの多い台風も、日本では梅雨以後夏期の水瓶(各地のダムや山間部の川)への重要な水源にもなることから、来なければそれでいいというものでもありません。
 2005年の台風十四号は大きな被害を生みましたが、それまで渇水によって貯水率0%となっていた早明浦ダムをたった一日で一気に100%まで回復させた事もあります。

「……と、話が少し詳し過ぎる方向に行ってしまいましたが、台風に関して説明するとおおむねこんな感じです……って、ん?」
 ふとタンクは、インプレッサの様子がおかしいのに気がついた。
 あまりに詳しい説明だったせいか、インプレッサの頭からはケムリが出ていたのだ。
 そして、

 プスプス……ボンッ!

 とうとう軽い音を立てて爆発してしまったのだった。
「ちょ……インプレッサ、大丈夫ですか!?」
「あ〜、うん。大丈夫だよ。ははははは……」
 頭からケムリを出しながらも、インプレッサは苦笑して応えるのであった。

 一方、日本よりも遥か南の海上。

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 例の台風。
 凄まじい暴風雨が吹き荒れている。
 その風の中をデコトランは飛んでいた。
 彼にとっても、実際の台風を体験するのは初めての話である。
 驚異的な自然の力を目の当たりにして、彼はある種の興奮を覚えていた。
「凄まじいエネルギーだ。これでコマルダーを作れば、ヒカリアン共など一ひねりに出来るぞ……」
 雨に打たれつつも、自信に満ちた笑みを浮かべ、コマルダーボールを取りだす。
 そして、
「生まれ出でよ、コマルダー!」
 デコトランは叫びながら、風の中にコマルダーボールを放る。
 その流れに乗ったコマルダーボールは風のエネルギーを吸収し、グングン巨大化していった。

ズォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

<コマ〜ルダ〜〜〜!>
 ついには、竜巻型の巨大なコマルダーと化したのだ。
 中心部は20mに達するコマルダーボールで、その周囲を竜巻状の風がおおっている。
「コマルダーよ、東京中を吹き飛ばし、人間共を不幸のどん底に叩き落とすのだ!」
<コマ〜ルダ〜〜〜!>
 台風コマルダーは東京の方に進路を取ると、速度を上げて北上していった。

 さて、そんな事は知らないヒカリアン達は、各々息抜きをしたり、仕事をしたりしていた。
 インプレッサとランサーは、彼らの部屋でタクヤ達とテレビゲームを楽しんでいる。
 ラングラーはアウトドアグッズの手入れ。
 カウンタックとタンクは、司令室で情報のチェックやメンテナンスなどを行っていた。
「今日もこのまま何事もなく過ぎてくれれば良いな」
「そうですね。……どうです、隊長。そろそろお茶にしませんか? ちょっと良い茶葉が手に入ったんですが」
「いいな。よし、それじゃあ、休憩にするか」
 しかし、運命は気まぐれで、彼らの休憩はフイになる事になる。
 二人が軽くのびをして力を抜いたときだった。
『臨時ニュースです』
 モニターの一つに、気象ニュースが自動で映し出される。
 ガレージ内のモニターは、何か異常があればすぐにそれらの情報をキャッチ出来るようになっているのだ。
「臨時ニュース?」
 タンクは気象ニュースに目を向ける。
『先日発生した大型台風は向きを変え、東京に一直線に向かっている模様です』
 テレビに映っているキャスターの背後の画面には、東京へと進路を変えた台風が映し出されていた。
 その時であった。

 ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ!

 ガレージ内の警報ブザーが音を立て始めたのだ。
「んっ!?」
 タンクがモニターをニュース画面から切り換えると、映し出されたのは台風コマルダーであった。

 プシューッ!

「どうしたの!?」
 司令室のドアが開き、インプレッサ達が走り込んでくる。
「みんな、これを見てくれ」
 カウンタックが、モニターに映る台風コマルダーを指さす。
 一同はその巨大な姿を見て、思わず呆然と鳴る。
「な、なんだ、このコマルダー……」
 ラングラーでさえ、そう呟くのがやっとという有様だった。
「あんなのがもし東京に上陸したら、ひとたまりもないよ!」
 ランサーも叫ぶ。
 彼の頭の中には、コマルダーが東京に上陸した際に引き起こされる惨状の光景がありありと映し出されていた。
 カウンタックはインプレッサ達の方に向き直ると、すぐさま指令を出した。
「ヒカリアン、全員出動だ! 何としてもあのコマルダーを止めるんだ!」
「了解!」
 ヒカリアン達は出撃の準備をする。
 タクヤとミズキも心配そうにカウンタックに近寄った。
「カウンタック、おれ達にも何か手伝う事無い!?」
「ありがとう、タクヤ君、ミズキちゃん。君達はここで、我々のサポートをしてくれるかい?」
「うん、分かった!」
 タクヤとミズキも頷くと、司令室のコンソールに座った。
「システムは有る程度オートマチックになっています。ですから、タクヤ君達にも簡単に使えるはずです」
「OK!」
「みんな、気をつけて!」
 タクヤとミズキに見送られ、ヒカリアン達は出動するのだった。



 その頃、デコトランと台風コマルダーは東京を目指して海上を進んでいた。
「今日こそは我らの勝利。そして、地球がムボウデーンの物になるのも今日だ!」
<コマ〜ルダ〜〜〜! ……コマ?>
 台風コマルダーが、何かを発見したようであった。
「どうした、コマルダー?」
 デコトランもそれに気づいて声をかける。
 見ると、こちらに向かって複数の影が飛んでくる所であった。
 そう、ヒカリアン達である。
 デコトランは彼らの存在を認めると、微笑みを浮かべる。
「来たか……」
 後が無いにも関わらず、この落ち着きぶりはどうだ。
 台風コマルダーに絶対的な自信を持っているからこそ出る態度であった。
「ムボウデーン!」
 カウンタックを先頭に、ヒカリアン達が眼前で止まる。
「遅かったな、ヒカリアン」
 台風コマルダーの正面に浮かび、腕を組んだデコトランが得意そうに言う。
「ムボウデーン、これ以上悪い事はさせないぞ!」
「ふふふふふ、我らを止める事が出来るかな?」
「止めてみせる! エンジンガン!」
「ガルライフル!」

 ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!
 ガウン! ガウン! ガウン! ガウン! ガウン! ガウン!

 インプレッサとカウンタックが、それぞれ台風コマルダーに向かって自分の武器を発射する。
 だが、
<コマ〜ルダ〜〜〜ッ!>
 どちらも台風コマルダーを覆う風の層にかき消されてしまったのだ!
「なっ、何!?」
「そんな……」
「ふわっはははははははははははははははは! そんな物がこのコマルダーの風に通用するか!」
 それならばと、今度はタンクが前へ進み出る。
「これならどうです! エナジー・トランスレイト!」
 タンクの手にした銃から、虹色の光線がコマルダーに向けて照射される。

 パァァァァァァァァァァァァァァッ……

 しかし、それも台風コマルダーの風の前では、焼け石に水であった。
 あまりにエネルギーの量が膨大すぎて、変換しきれないのだ。
「ぶわっははははははははははははははははははははははははははは! その程度のエネルギーが効くか! バ〜カ!」
 デコトランは一層大笑いをして、あかんべぇをする。
 ……こいつもこういうところが無ければ、シリアスな悪役として通用するんだろうけど、いかんせん調子に乗りやすいところが玉にきずであった。
「さあコマルダー、奴らを吹っ飛ばしてしまえ!」
<コマ〜ルダ〜〜〜!>

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 台風コマルダーの風が、一層激しさを増す。
「うわっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 ヒカリアン達は、次々とその風の中に巻き込まれ、木の葉のように吹き飛ばされる。
「やったぞ! これでヒカリアン共も最期だ! オレの勝ちだーっ!」
 吹き飛ばされ、見えなくなっていくヒカリアン達を見て、デコトランは飛び上がって喜んでいた。
 今までの屈辱の日々がこれで報われる――
 そんな思いが彼の中に渦巻いていた。



「う、うん……」
 目が覚めたインプレッサは、半ばボーッとした眼で辺りを見回す。
 どうやら自分がどこかの砂浜に打ち上げられていたらしい事に気づくまで、そんなに時間はかからなかった。
 近くには、カウンタック達も倒れている。
「ランサー! ラングラー!……みんな、しっかりして!」
 インプレッサは、他のヒカリアン達に駆け寄って揺り起こす。
「う〜ん……」
「ここは……?」
 カウンタック達も、ぼんやりとした眼でキョロキョロと辺りを見回した。
 そこは、洋上に浮かぶ小さな島らしかった。
 徒歩でも五分ほどあれば一周できるくらいの小さな島だ。
「そうか、私達は、あのコマルダーに飛ばされて……」
 カウンタックは立ち上がると、ボディについた砂をパンパンと払い落とした。
 そして、ガルライフルを取り出すと、壊れていないかチェックする。
 どうやらどこにも異常は無いようだ。
 それを確かめると、カウンタックはガルライフルを構えて言った。
「みんな、あのコマルダーを止めるぞ。絶対にヤツを上陸させる訳にはいかない」
「うん!」
 一同は立ち上がる。
 が、ラングラーは訝しそうな顔をする。
「けど、どうやって止める? あいつにはオレ達の武器は通用しないんだぜ。どう戦う?」
「その事なんですが……」
 応えたのはタンクである。
 彼は一同に手招きをすると、耳許で何やらささやいた。
 なにか作戦を思いついたようだ。
 そこへタクヤ達から通信が入る。
『みんな、大丈夫!?』
「タクヤ君! 教えてくれ。我々は、今どの辺りにいるんだ?」
『東京から南に数十キロ行った、地図にも乗ってない位の小さな島だよ。台風のコマルダーは、まだみんなより南の方にいるみたい。だけど、すぐにそっちに到着しそうだから気をつけて!』
「分かった、有り難う」
 カウンタックは、キッと南の方を睨んだ。
 水平線の向こうに竜巻が見える。
 だが、それがただの竜巻でない事は、中心部に浮かぶ巨大なコマルダーボールから明らかだった。
「みんな、タンクの作戦通りに行くぞ!」
「了解!」
 ヒカリアン達は背中のブースターを吹かすと、一斉に上空に飛び上がった。

「東京までもうすぐか……」
 台風コマルダーの横を飛びながら、デコトランは感慨深そうに呟いた。
 東京の全てを吹き飛ばし、ムボウデーンがブラッチャーの先祖となる不幸と哀しみに満ちた人類を作り出す足がかりとする――
「もうすぐだ……もうすぐ地球も我らの物に……」
 またしてもデコトランは陶酔している。
 そんな彼を現実に引き戻す声が聞こえたのは、その時だった。
「ムボウデーン!」
 インプレッサ達ヒカリアンが、再び台風コマルダーを迎え撃とうと飛んできたのである。
 しかし、デコトランの自信に満ちた態度には変化は無い。
「またやられにやって来たか。何度来ても結果は同じ、早いところ諦めた方が賢くはないか?」
「同じじゃない!」
「ほう?」
「確かに僕達一人一人の力は小さいよ! だけど僕達には、チームワークと勇気があるんだ!」
 ヒーローらしい台詞を叫ぶインプレッサに、デコトランはムカッとしたようだ。
「けっ、かっこつけやがって! コマルダー、今度は奴らがバラバラになる位の風を見舞ってやれ!」
<コマ〜ルダ〜〜〜!>

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 再び台風コマルダーが、勢いよく風を巻き起こす。
 その威力は、もはやカマイタチと言えるほどだった。
 いかにヒカリアン達のボディが通常より強化された金属で出来ているとは言え、まともに喰らえば先程のデコトランの言葉通りバラバラになってしまうのは必死だ。
 しかし、ヒカリアン達は全く慌てていない。
 風の刃が目前まで迫った時、カウンタックが叫んだ。
「みんな、今だ!」
「おうっ!」
「なにっ!?」
 カウンタックの号令と同時に、ヒカリアン達は台風コマルダーよりもさらに上空に向かって一気に上昇したのだ。
 デコトランはその不可解な行動に目を見開く。
「何のつもりだ!?」
 ヒカリアン達は上昇を続けると、台風コマルダーの真上で止まった。
「よし、今だ!」
「了解!」
 そのまま中心部のコマルダーボールに向かって、ヒカリアン達は一斉に銃撃を開始する。

 ズダダダダダダダダダッ!

 銃撃は的確に、コマルダーボールに向かっていく。
「バカめ! いくら上から撃ったところでムダなあがきだ! また風の層で消し飛ばしてくれる!」
 叫ぶデコトランだったが、次の瞬間その顔は驚愕のために歪んでいた。

 ドガガガガガァァァァァァァァァァン!

 銃弾は全て、正確にコマルダーボールを捉えていたのだ。
「なっ、何だと!」
<コマルダ〜〜〜ッ!>
 台風コマルダーが悲鳴をあげる。
「一体どういう事だ!?」
「知らないのですか? 台風の目は、ほとんど風が吹いていないんですよ!」
 タンクがニッコリと微笑んで言った。
 弱点であるコマルダーボールに直撃弾を受けたためか、台風コマルダーの風は急速に弱くなっていく。
<コマルダ〜……>
「よしインプレッサ、とどめだ!」
「了解! エンジンガン、エンジン全開!」

 ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン!

 銃の本体が振動を始め、銃口に赤いエネルギーが集まっていく。
 その内に、銃口には火がともっていた。
「ファイヤー・ストライク!」
 インプレッサがトリガーを引くと同時に、エンジンガンから炎のエネルギーが発射された。

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

「ガルライフル、フルスロットル!」
 声と共に、ライフルの基部が振動し、銃口に光が集まっていった。

 ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン!
 バチッ、バチバチッ……

 次第に銃口は放電を始める。
「エレクトロ・シューティング!」
 引き金が引かれ、ライフルから稲妻状の光線が発射された。

 ヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァ!

 炎の渦と稲妻は絡まり合って、瞬く間に台風コマルダーの中心核である巨大コマルダーボールを包み込む。
<コマッタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!>

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 爆発が巻き起こり、台風コマルダーは、その風のエネルギーと共に消え去った。
「ぐっ……おのれ……!」
 デコトランは今までに無いほど悔しそうな顔をして、その場から消える。



「みんな〜〜〜!」
 水平線の向こうから飛んでくるヒカリアン達を、タクヤとミズキは海岸で出迎えていた。
 夕陽に照らされ、海も砂浜も赤く染まっている。
 それは、えも言えぬ美しさであった。
「タクヤ君、ミズキちゃん、ただいま!」
 二人の姿を見つけたインプレッサも、笑顔で手を振り返す。
 彼、いや彼らにとっては、タクヤ達の笑顔こそが、一番のねぎらいであり、報酬であった。
(タクヤ君達の笑顔を守りたい)
 そんな思いが、全員の胸中に渦巻いていた。

To be continued.


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