完成、ヒカリアンガレージ

 シト、シト、シト、シト……

 鉛色の雲から、間断なく滴が落ち続ける。
 そう、雨が降っているのだ。
 あ〜、やだなぁ。
 何か気分も乗らないし、今日はこの辺にしとこうかなぁ。
 そうだ、プラモの新作買ったんだっけ。
 今日は部屋でプラモでも作りながら、大人しくしとくか。
「くぉら〜っ! 何いい加減な事言ってるのさ!」
 うお、インプレッサ。
「バカな事言ってないで、早く今回の話を進めなよ!」
 そんな事言っても……ネタがなぁ。
「ネタだったらいくらでもあるでしょ! 例えば……ヒソヒソ」
 あ、成る程。
 それいいな。
 よし、それでは早速、今回の話を始めちゃおう!
「あのね……」

 ある日の放課後、タクヤとミズキはインプレッサに乗って、町内の外れに来ていた。
 そこはちょっと前から廃墟となっている、小さな町工場の跡であった。
「ここだよ」
 タクヤとミズキを乗せたインプレッサが、工場の正門前で止まる。
「え、ここって……」
「町はずれの工場跡……よね?」
 ハテナ顔をする二人に、インプレッサは笑って言った。
「大丈夫だよ……ほら」
 インプレッサが車体から腕を出して指を鳴らすと、それを合図にしたように門が開く。
 そのまま少し進むと、今度は工場の建物のシャッターが開いた。
 その中に広がっていた光景は――
「おおっ!」
 タクヤ達は思わず感嘆の声を出す。
 なんと工場の中は綺麗に改築され、様々な機材が置かれていたのだ。
 壁にはモニターがあり、部屋の隅には人一人が入れるくらいのカプセルが並べてある。
 どう見ても、地球外の技術で作られた代物だ。
「驚いたかい、二人とも?」
 カウンタック達が、タクヤ達を笑顔で出迎える。
「うん、かなり驚いた……」
 タクヤもミズキも、まだ呆けている。
「何時の間にこんな基地を……」
「ここは『ヒカリアンガレージ』です。実は地球に来てから、いい物件は無いかと探していたんですよ。それが先日見つかったので、短時間で基地に改造しました」
「成る程。前回みんなの出番がほとんど無かったのは、そういう理由だったんだね」
 タクヤが腕を組んで「うんうん」と頷く。
「……いやまぁ、合ってると言うか、単に作者が出番を作るのを忘れていたと言うか……」
 タンクは苦笑して言った。
「それじゃあインプレッサ。折角だから、タクヤ君達にガレージの案内をしてやりなよ」
「うん、分かった」
 ラングラーに促され、インプレッサはタクヤ達にガレージの中を案内して回るのだった。

 場所は変わり、町の小さな公園。
 簡単な滑り台やブランコ、そして砂場などがあり、小さな子供達がワイワイはしゃぎ回っている。
 そんな公園のベンチに座って、デコトランはボ――ッと空を見ていた。
「作戦は失敗続き……ペケノートはローンだけが残り、ヒカリアンどもは次々と仲間を増やす……。はぁ、一体オレはどうすりゃいいんだ……」
 デコトランは深くため息をつく。
 この日、彼の気分はかなり灰色であった。
 理由は先程彼が述べた通り。
 このままでは、地球侵攻の任からも降ろされてしまう――
 そんな事まで考えるようになってしまっていた。
 その様子は、まるで会社をクビになった事を家族に言えず、出勤するフリをして公園で時間を潰しているサラリーマンのようであった。
「うるさいわ!」
 おっと、聞こえてたのね……。
「全く……ん?」
 ふと横を見たデコトランの目に、アジサイが入る。
 その葉の上を、カタツムリがのそのそと這っていた。
「カタツムリか……」
 カタツムリを見ている内に、デコトランの脳裏にある事が閃いた。
「そうだ!」
 ガバッと起きあがって、デコトランは叫ぶ。
「今度という今度こそは、完璧な作戦! これならヒカリアンも恐るるに足らず、だ!」
 さっきまでとはうって変わり、デコトランは自信満面に笑っているのだった。

「すごいね〜」
 ガレージの中を一通り見て回った後も、タクヤ達は興奮冷めやらぬと言った感じであった。
「これで私達も活動の拠点が出来たし、ムボウデーンが現れればすぐに分かる……」
 カウンタックが言い終わらぬうちに、警報ブザーが音を立て始めた。

 ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ!

「むっ!?」
 ヒカリアン達がモニターを見てみると、そこには地図が映し出されており、その一カ所で光点が明滅を繰り返していた。
「さっそく現れたようだな。インプレッサ、ラングラー、ランサー、急いで現場に向かってくれ!」
「了解!」
 インプレッサ達は敬礼すると、ガレージから飛び出していった。

 街にはコマルダーが出現していた。
 しかしその姿は、どう見ても巨大なカタツムリである。
 目の部分がコマルダー特有のしかめ面になり、口も一見してどこにあるか分かるほど巨大化している、といったくらいだ。
 そしてその周囲では、人々が滑って転んだり、カタツムリのような超スローペースでしか動けないようになっていた。
「今回こそは上手くいきそうだな。あとは奴らを待つのみか……」
 デコトランが呟いた時だった。
「ムボウデーン、それ以上悪い事はさせないぞ!」
 まるでタイミングを見計らったかのように、インプレッサ達が走ってきたのだ。
 インプレッサ達は、瞬く間に光を放ってヒカリアンの姿に変形する。
「ヒカリアンチェーンジ! ライトニング インプレッサ!」
「ヒカリアンチェーンジ! ライトニング ラングラー!」
「ヒカリアンチェーンジ! ライトニング ランサー!」
 現れたヒカリアン達を前にしても、デコトランは落ち着いていた。
「ムボウデーン! 今度は何を企んでいるんだ!?」
「ふふふ、見ての通りだ。人間達をスローペースにしたり、滑らせているのだ。これで奴らの生活は滅茶苦茶になるだろうよ」
「そんな事、許さないぞ!」
 インプレッサがエンジンガンを取り出して、カタツムリコマルダーに突進する。
 それを見て、デコトランは誰にも聞こえないくらいの小声で呟いた。
「かかったな……」
 そう、デコトランの真の狙いは他にあったのである。
「コマルダーよ、お前の特製塩水を、奴らにプレゼントしてやれ!」
 右手を振って、デコトランはコマルダーに命令した。
 デコトランの命令に、カタツムリコマルダーはゆっくりながらも反応する。
<コ〜マ〜ル〜ダ〜!>
 カタツムリコマルダーは、口から液体を吐き出す。

 バシャッ!

 それはヒカリアン達に正面からかかった。
「なんの、こんな塩水くらいで……」
 が、デコトランは笑いをこらえているような顔で言った。
「大きな顔をしていられるのも今の内だ。よしコマルダー、場所を変えるぞ」
<コ〜マ〜ル〜ダ〜>
 コマルダーは相変わらず間延びしたような返事をすると、のそのそと歩き出す。
「しめた、奴め足が遅いぞ!」
「そうか、カタツムリだからな!」
 ヒカリアン達は、カタツムリコマルダーに向かってダッシュする。
「これならすぐに追いつけ……追いつけ……あ、あら?」
 しばらく走ってから、ヒカリアン達は自分達の異常に気づいた。
 いくら走っても、コマルダーに追いつけないのだ。
 いや、それどころか、周囲の様子もおかしい。
 周りの景色がやたらと巨大に見えるのだ。
 それは彼らの勘違いではなかった。
「わ〜っ、僕達の身体が縮んでるーっ!」
「ナメクジかーっ!」
 そう、身体がおもちゃのようなサイズにまで小さくなってしまっていたのだ。
 カタツムリコマルダーの背中に乗っていたデコトランが、振り向いて得意気に叫んでいた。
「どうだヒカリアン共! こいつの塩水を浴びた者は、身体がナメクジ化してしまうのだ! せいぜい頑張って基地まで逃げ帰るんだな!」
「くっそー……」
 ゆうゆうと去っていくコマルダーとデコトランを、ヒカリアン達は悔しそうに見送るしかなかった。
 ちなみに何故カタツムリやナメクジに塩をかけると小さくなるかだが、それは『浸透作用』という液体の性質が関係している。
 浸透作用とは『半透膜』という「小さい分子は通すが大きい分子は通さない膜」を境に、濃さの違う液体を入れると薄い液体が濃い液体の方へ移ってしまう働きの事だ。
 塩をかけたとき、ナメクジやカタツムリの体の中と外では、濃さが違ってしまう訳だ。
 すると、ナメクジやカタツムリの体の表面の膜が半透膜の役割をして、体の水分が中から外に一気に流れ出てしまうのだ。
 以上、勉強になったかな?
(何のこっちゃ……)

 そして、ヒカリアンガレージ。
「わーっ、どうしたんだ、みんな!?」
 帰ってきたインプレッサ達を見て、カウンタック達は仰天する。
 彼らが帰ってくるまでには、それはそれは苦労の連続だったという。
 犬に追いかけられるわ、子供にはおもちゃと間違われるわ、さらには車にひかれそうになるわ……。
「タンク、何とかして……」
 そこまで言って、インプレッサはバッタリと倒れた。
 疲労と緊張感がピークに達したのだ。
「ふ〜む……」
 タンクは首を捻ると、インプレッサ達を拾い上げて手近にあった丼の中に入れる。
 そしてヤカンを持ってきて言った。
「身体がナメクジ化してるのなら、水をかければ……」
 そのまま丼に、ヤカンの水を注ぎ込む。
 すると、
「成功です! 水を吸って元に戻りました!」
 まるで昔あった、水を吸って大きくなる消しゴム人形のように元の大きさに戻ったのだ。
 が、
「わ〜っ、水分を吸収しすぎた〜!」
 ランサーは一回りほど太ってしまったのであった。
「しかし、カタツムリなのにナメクジ化させられるなんて……」
「一体どういう事なんだろう?」
 ……まぁ、上の段落でも述べたが、カタツムリも塩で縮む事は縮むので、間違いではないのだが。
 しかしながら、実はあのコマルダーにはあるカラクリがあったのであった。
 その秘密は、また後に取っておくとして……。
「どちらにしても、あのコマルダーの塩水はやっかいだぜ。あれを何とかする方法を考えないと戦いようが無い……」
 首を捻るラングラーであったが、ランサーが手を挙げて言った。
「それなら大丈夫! ボクに考えがあるんだ!」
「考え?」
「へへへ……まぁ、任せておいてよ」
 不思議がるインプレッサ達をよそに、ランサーは得意そうに胸を張って見せた。
「よし、それじゃあ早速出撃だ!」
「了解!」
 インプレッサ達は、勢いよくガレージから飛び出して行った。
「しかし……打つ手って何でしょうね?」
「さあ……」
 出て行くインプレッサ達を見送りながら、カウンタック達は話し合っていた。

 その頃、街中は混乱に陥っていた。
 ……傍目にはそう見えないかも知れないが。
 あるところでは道の上を滑って転げ回り、またある所ではビデオのスロー再生のような光景が発生していた。
 デコトランはその光景を、カタツムリコマルダーの殻の上に座って、のんびりと満足そうに眺めている。
「ふふふふふ。いいぞコマルダー、その調子だ」
「そこまでだ!」
「ん?」
 デコトランが声のした方を見ると、勢い込んだインプレッサ達が走ってきたところであった。
「性懲りもなくまた現れたか。コマルダー、奴らをもう一度小さくしてやれ!」
<コ〜マ〜ル〜ダ〜!>
 カタツムリコマルダーは、再び口から塩水を吐く。

 バシャッ!

 塩水はまたもヒカリアン達に正面からかかった……かに思えた。
 だが、ヒカリアン達の周囲は青い透明のバリアに包まれており、塩水がかかる事は無かった。
 見ると、ランサーがドライブランスを高速でクルクルと回している。
 バリアはそのドライブランスから発生しているのだ。
「『アクアウォール』。ドライブランスにはこういう使い方もあるんだよ!」
「成る程。考えってのはこれか」
 ラングラーが感心したように口笛を吹いた。
「ランサー、すっごい!」
 インプレッサも飛び上がってはしゃぐ。
 逆にデコトランはキッとヒカリアン達を睨みつける。
「ならば……コマルダー、奴らを小さくするのはやめだ! 本気でやってしまえ!」
<コ〜マ〜ル〜ダ〜!>
 次の瞬間、恐るべき事が起こった。
 何と、カタツムリコマルダーから殻が外れて分離したのだ。
 もちろんヒカリアン達もその様子に仰天していた。
「ええっ!?」
「カタツムリって、殻がとれるの!?」
「いや、そんな筈は……」
 そんな事を話している間に、分離した殻の方がタイヤのように高速で転がり、ヒカリアン達に迫る。
「危ない!」
 あわててインプレッサ達は避ける。
<コ〜マ〜ル〜ダ〜!>
 そこに、ナメクジのようになったカタツムリコマルダーが目から光線を出した。
「おっと!」
「くっ、挟み撃ちか……」
「どうしよう?」
 不安そうにインプレッサは呟く。
 ラングラーが進み出て言った。
「よし、殻の方はオレがなんとか止める。お前達はコマルダーの本体の方を頼む!」
「了解!」
 ヒカリアン達は散開して、それぞれの目標に向かう。
 ラングラーは殻の正面に立って、両手を広げる。
「さあ来い!」
 仁王立ちするラングラーを潰そうと、コマルダーの殻が高速で転がって来る。

 ガシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!

 次の瞬間、ラングラーは巨大なコマルダーの殻を、見事に受け止めていた。
 摩擦熱により足下でプスプス、と煙が出ているが、ラングラー本人は特にダメージを受けた様子は無い。
 恐るべき膂力(筋肉の力のこと)であった。
「うそ……」
「すっごい……」
 インプレッサ達も、その光景を半ば呆然として見ていた。
 が、デコトランは涼しい顔をして叫ぶ。
「今だコマルダー、やれ!」
「なにっ!?」
 何と、ラングラーが受け止めた殻からもう一体のカタツムリコマルダーが飛び出したのだ。
「驚いたか、ヒカリアン共! 実は今までのカタツムリコマルダーは、ナメクジコマルダーがカタツムリコマルダーの殻を背負っていたのだあっ!」
 これがデコトランの作戦だった。
 二体のコマルダーを一体に見せかけヒカリアン達の虚を突くというものだ。
<コ〜マ〜ル〜ダ〜!>
 真・カタツムリコマルダーは、ラングラーを押しつぶそうとのしかかる。
「くっ、そうは……いくかあっ!」
 だが、さらに恐るべき事に、ラングラーはカタツムリコマルダーを投げ飛ばしたのだ。

 ズシィィィィィィィィィィィィィィン!

 カタツムリコマルダーの巨体が、地面に音を立てて倒れ込む。
「なんと!」
 当てが外れたデコトランは、驚くやら慌てるやら。
 一方インプレッサ達も、ナメクジコマルダーと戦っていた……はずだったのだが。
 ランサーは鳥肌を立ててブルブル身震いしている。
 インプレッサはハテナ顔でランサーに尋ねる。
「ランサー、どうしたの?」
「実はボク……ナメクジがダメなんだ!」
「……え?」
 インプレッサの目が点になる。
 ランサーにもこういう弱点があったか。
 相手の正体がナメクジと分かった途端、ランサーは戦意を喪失してしまったのだ。
「……しょうがないなぁ。じゃあ、ここは僕が!」
 やや呆れながらも、インプレッサは気を取り直してエンジンガンを構える。
「ナメクジなら、乾燥に弱いはず!」
 言うなり、エンジンガンから火炎を発射した。
 だが、コマルダーになってしまったとは言え、元は普通の生き物だ。
 必要以上に傷つけないように、威力は調整してある。
 見る間にナメクジコマルダーの表面は乾き、固まってしまう。
<コ……マ……ル……ダ〜……>
 そこへ、ラングラーの声が聞こえてきた。
「インプレッサ、コマルダー達を一カ所に集めてくれ!」
「一カ所に? 分かった!」
 インプレッサは固まって動けなくなったナメクジコマルダーに取りつくと、カタツムリコマルダーの方まで押し始める。
 ラングラーも、転がって目を回しているカタツムリコマルダーをナメクジコマルダーの方まで押していった。
「よし、仕上げだ!」
 ラングラーが右手を挙げる。
 その開いた掌に、光が集まっていった。
「いくぜぇ……ヒーリング・シャワー!」
 同時に振り下ろした掌から、虹色に輝く光のシャワーが発射された。
 虹色の光線は、カタツムリコマルダーとナメクジコマルダーを包み込む。
<ホワホワ〜……>
 二体のコマルダーは、気持ちよさそうな表情になって光の粒子と化していった。
 光が晴れると、そこには元に戻ったナメクジとカタツムリがいた。
 もちろん傷一つ付いていない。
 これがヒーリング・シャワーの効果であった。
 コマルダーの元となった生き物を傷つける事無く、コマルダーの暗黒エネルギーのみを分離させる技なのだ。
「そ、そんなバカな!?」
 デコトランの目が驚愕のために見開かれる。
 そこへインプレッサが飛び込んでくる。
「形勢逆転だな、ブラッチャー!」
「おのれ……!」
 怒りの表情を浮かべるデコトランだったが、インプレッサはすぐさまエンジンガンにエネルギーをチャージしていた。
「エンジンガン、エンジン全開!」

 ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン!

 銃の本体が振動を始め、銃口に赤いエネルギーが集まっていく。
 その内に、銃口には火がともっていた。
「って、ちょっと待て! いくら何でも早すぎないか!?」
 デコトランはあたふたする。
 だが、
「うるさい! ページ数の都合だよ! ファイヤー・ストライク!」
 インプレッサがトリガーを引くと同時に、エンジンガンから炎のエネルギーが発射された。

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 巨大な炎は渦を巻き、デコトランを包み込む。

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 大爆発が巻き起こった。
 爆炎の中から、ズタボロになったデコトランが空高く飛んでいく。
「ページ数ってなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 キラン!

 物語の都合という理不尽な理由により、デコトランは今日もお星様にされてしまうのだった。
 合掌。


 戦いが終わって、インプレッサ達はヒカリアンガレージに帰還していた。
「それでは、只今よりヒカリアンガレージ完成記念のお祝いを開始します!」
 ジュースの入ったコップを掲げて、カウンタックが音頭を取る。
「乾杯!」
「かんぱ〜い!」

 カチャン!

 軽い音を立てて、グラスが打ち鳴らされる。
 ヒカリアンガレージの完成を祝って、ささやかなパーティが催されていた。
「さあ、遠慮無く召し上がってください」
 タンクが笑顔でテーブルに料理を並べる。
「いっただきま〜す!」
 さっそく一同は、料理を口に運ぶ。
 が――

 数秒後、タンクを除く全員が床に突っ伏していた。
 原因はタンクの料理であった。
 とてつもなくマズかったのだ。
 その様子を見て、タンクは不思議そうに呟いた。
「おかしいなぁ……。栄養素の配合バランスは完璧だったのに……」
 ……かくして、思いも寄らぬアクシデントはあったものの、地球での拠点を得たヒカリアン達。
 彼らの志気も、より一層高まるのであった。

To be continued.


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