ピンチ、ヒカリアン!

 さて、皆様はどのくらいヒカリアンに関してご存じだろうか?
 そもそもヒカリアンとブラッチャーは、我々地球人類が進化した存在である。
 しかしながら、彼らは地球人とは違って実体のある肉体は持っていない。
 いうなれば、彼らは一種の“精神生命体”という訳だ。
 さらに言えば、その実体の無い肉体を維持するためのエネルギー源も異なる。
 ヒカリアンたちは『電気』をエネルギー源としており、対してブラッチャーは『暗黒エネルギー』という、より定義が不明瞭なものをエネルギー源としているのだ。
 共通して言える事は、彼らは地球上ではエネルギー体の状態を三分間しか保てないという事である。
 これは実体が無い故に、地球の大気などにその身体が一体化して分散してしまうためらしい。
 コップに色水を一滴だけ垂らすと、徐々に分散して元の色水が分からなくなってしまうのと似たような原理だ。
 その為、彼らは地球上で活動するための“器”として、機械類と融合するという方法をとった。
 特にヒカリアンの方は、マシンと合体する事で電気を容易に補給する、という目的も兼ねているのである。
 今回はそれらも絡んだ話をしてしまうのだ。
 では、スタート!

「ねぇタクヤ君、今朝のニュース見た?」
「見た見た。間抜けだよねぇ、今時ガス欠なんてさあ」
 ランドセルを背負ったタクヤとミズキが、朝日の中、道を歩いていく。
 ただいま二人は登校中なのだ。
 二人が見たニュースというのは、
「とある道で自動車がガス欠を起こし、そのせいで二時間の渋滞を引き起こした」
 というものであった。

 ブルルルルルルルルルルルル……

 そこにエンジン音が響く。
「ん?」
 二人が振り向くと、彼らの後ろから銀色に塗られた無人のインプレッサがゆっくりと走ってきた。
 言うまでもなく、ヒカリアンのインプレッサ(ややこしいな……)である。
「お早うタクヤ君、ミズキちゃん」
「お早う、インプレッサ」
 インプレッサがフロントガラスを上げて、目を出した。
 心なしか、その目は少し眠たそうであった。
「どうしたの、インプレッサ?」
「それがちょっとパトロール中なんだけど……朝早かったから眠くてさ」
「おいおい、居眠り運転なんてしないでよ?」
 苦笑するタクヤに、インプレッサも苦笑いを返した。
「うん、いざとなったら燃料タンクにコーヒー入れるよ」
「大丈夫なの、そんな事して……」
 思わず汗ジトになるミズキであった。
「そう言えば、インプレッサは今朝のニュース見た? ガス欠で渋滞が起きたってやつ」
「うん、見たよ。迷惑な話だよねぇ。僕達だったら、絶対そんな事無いけどな」
「そりゃ、自動車本人が生きてるようなものなんだから……」
 またしても苦笑を浮かべてタクヤが言った。
 その時、ミズキが気づいたようにタクヤに声をかける。
「タクヤ君、そろそろ行かないと、遅刻しちゃうわよ」
「いけね! じゃ、インプレッサ、またね!」
「うん!」
 走り去るタクヤ達の後ろ姿を見送って、インプレッサはパトロールを続けるのだった。
 一方、走りながらもタクヤとミズキの会話は続く。
「なぁ、ミズキ。コーヒーで思い出したんだけど、ヒカリアン達って一応ロボットだよなぁ?」
「だと思うけど……」
「何で普通に物が食べられるんだろうね?」
「さあ……」

 さて、その頃街中では。
「毎度〜。ガソリン千円分入りましたよ、お客さん」
「ああ、どうも」
 とあるガソリンスタンド。
 店員が黒いトレーラートラックに給油をしているところであった。
 まだ早い時間であるためか、すぐ側の道路にもあまり自動車は走っていなかった。
「ほい、千円」
 トラックの右ドアが開くと、そこから巨大な腕が伸びて、店員に千円札を渡す。
 が、店員はその異様な光景に疑問を持つ事も無くお札を受け取った。
 ま、ヒカリアンだしね。
「ありがとう御座いました〜、またお越し下さい」
 店員に見送られ、そのトラックはガソリンスタンドから発進していった。
 さて、懸命な読者諸君にはもうおわかりであろう。
 このトラック、実はデコトランだったのである!(白々しい……)
「ふぅ、満腹満腹。さ〜て、どうすれば人間共を不幸に出来るかだが……」
 デコトランは走りながら、周囲を見回す。
 走っている内に、辺りは徐々に自動車が増えてきた。
 市街地ともなれば、それも当然とも言える。
 自動車を見ているデコトランの脳裏に、インプレッサ達の顔が浮かんでくる。
「あのお邪魔虫自動車どもめ! 今日こそはギャフンと言わせて……ん、自動車か……」
 デコトランは邪悪な笑みを浮かべると、ハンドルをきる。
 どうやら今回の作戦を思いついたようだ。

 デコトランがやって来たのは、郊外にあるガソリンの備蓄施設であった。
 元々人の少ない場所に建てられており、さらに就業時間前である事もあってか、周囲には人っ子一人居なかった。
 いるのはせいぜい近所の野良猫やカラスくらい。
 今、デコトランは施設の中にある、球状のガソリンタンクの前に立っていた。
「自動車はガソリンが無ければ走れないからな。世界中からガソリンを奪ってしまえば人間共が困るだけでなく、ヒカリアン達に邪魔される事もなくなる……。我ながら実に良くできた作戦だな。ふふふふふふ、はっはっはっはっは!」
 デコトランはふんぞり返って大笑いしている。
 一人でここまで盛り上がれるのも、ある意味才能か。
「ほっとけ! さてと……」
 デコトランは例のコマルダーボールを取り出し、ガソリンタンクに向かって投げつけた。
「生まれ出でよ、コマルダー!」

 ズォォォォォォォォォォォォォォォッ……!

 ボールの中身である黒い不定形物質が取り憑くと、ガソリンタンクは巨大なコマルダーへと変貌する。
 その全高は軽く10mを超えている。
 丸いタンク型のボディに、パイプ状の腕と足。
 ボディのてっぺんからは油で出来たような真っ黒な頭部が生えており、あのしかめ面が浮き出ている。
「さあコマルダーよ、世界中のガソリンを吸い取って、人間共を不幸のドン底へと突き落としてやるのだ!」
<コマルダー!>
 ガソリンタンクコマルダーは、早速周囲のタンクにパイプの腕を突き刺すと、ガソリンを吸い取り始めた。
「ふっふっふ、良いぞコマルダー。その調子だ……」
 コマルダーの仕事ぶりを見て、デコトランはほくそ笑んでいた。
 翌日、東京中のガソリンスタンドというガソリンスタンドは、休業の危機に見舞われていた。
 原因は、ガソリンが運ばれてこないから、というものであった。
 勿論コマルダーが、備蓄施設のガソリンをすべて吸い取ってしまったためである。
 テレビでも、その事がニュースとして大々的に報道されていた。
『今、東京は前代未聞の出来事に見舞われています。昨日から今日にかけ、東京にあった全てのガソリンが無くなってしまったのです。高速道路もこのように閑散としています。市民生活にも深刻な影響が出始めている模様です』
 惣菜屋甚佐のカウンターに備え付けられた小型テレビに、高速道路に立ち、マイクを持ったニュースキャスターが映し出されている。
 タクヤとミズキはそのニュースを見ながら、のんびりと甚佐の総菜を口に運んでいた。
「静かだね〜」
「本当。車が無いとこんなに静かだとは思わなかったわ」
 ガソリンがなくなった事で、人々は生活に支障をきたし始めている。
 が、タクヤやミズキを始めとする子供達は、この状況を楽しんでもいた。
 と言うのも、車が走っていないということは、それだけ騒音も無く、事故も起こらない。
 それに、排気ガスも放出されないので空気も綺麗になるわけだ。
 あちこちで、子供達が歩行者天国と化した道路で遊んでいる姿が見られた。
 しかし、そんな子供達を眺めるカウンタック達には元気がない。
 子供達が喜んでいるのは嬉しいが、この状況を素直に喜べないといった感じである。
 タクヤ達もヒカリアン達の様子がおかしいのに気づいた。
「どうしたの、インプレッサ?」
「それにみんなも。元気無いわね……?」
 カウンタックが困ったような顔をして説明を始める。
「いいかい、タクヤ君、ミズキちゃん。私達ヒカリアンは、本当は“光エネルギー”というエネルギー生命体なんだ。地球ではそのエネルギー体でいる事が出来ないので乗り物を身体にしてるんだが、もう一つ理由があってね」
「理由?」
「そう。自動車や電車なんかは、電気が補充出来るだろう? 私達のエネルギー源は電気なんだ。物を食べてエネルギーに変換する事も出来るが、それはあくまで二次的な物だからね。このままだと、私達は走ることが出来なくなって、エネルギーも低下して しまう……」
「そんな……!」
「大変だ、何とかしないと!」
 驚愕の事実を告げられたミズキ達の顔に動揺が走る。
 タクヤ達は頭を抱えて解決策を考えるが、良い手は中々浮かばない。
 そんな時だ。
「そうだ!」
 インプレッサの頭上で電球が閃いたのだ。
 タクヤ達は揃って顔にハテナを浮かべる。

 一同がやって来たのは、近所の空き地であった。
 私有地ではあるらしいが、手入れはあまりされておらず、あちこちに雑草が生えている。
 さらに、『私有地』と書かれた看板も字がかすれていた。
 タクヤ達は、ちょうど空き地の真ん中くらいに立っている。
「この僕に名案があるんだ」
「名案?」
 見ると、インプレッサがスコップを手に地面を掘っている。
 深さはおおよそ2mと言ったところか。
「ふぅ〜、もうちょっとかな?」
 額の汗をぬぐって、インプレッサはスコップを持つ手を休める。
「何やってんだ、インプレッサ?」
 ハテナ顔でラングラーが尋ねる。
「ここを掘って石油を探し当てれば、めでたしめでたし、ってね」
 インプレッサは得意そうに胸を張って言った。
 しかし、それを聞いた他の面々はため息をつくやら、呆れるやら。
 カウンタックがジト目で口を開く。
「全く……石油というのは地面のかなり奥深くにあるんだぞ。そんなスコップで掘ったって、届くわけないだろう」
 タクヤも、
「それに石油ってのは、限られた場所にしか無いもんだよ? どこを掘っても出てくるってわけじゃないんだから」
 と続けた。
 二人の現実的な意見に、インプレッサはふくれっ面になる。
「む〜、出るか出ないかはやってみなきゃ分からないじゃんか!」
 再びスコップを地面に突き刺し、力任せに掘り進めていった。

 ザクッ、ザクッ、ザクッ!

 うむ、なかなか根性がある!
 そのインプレッサの根性に天が感銘を受けたのか、やがてスコップは何か固い物に当たった。

 ガキン!

 続けて、そこから液体が勢いよく吹き出す。

 プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

「出た!」
「えっ!?」
 見ればインプレッサの足下から、透明な液体が噴き出ている。
「やった! 石油だ石油だ! 見てよ、石油を掘り当てたよ!?」
 インプレッサは飛び上がって喜ぶ。
 しかし……。
「それは水だよ……」
 タクヤが嘆息しながら言った。
「水道管を破っちゃったみたいね……」
 ミズキも穴の中を覗き込んで呟く。
「え、水道管……? そう言えば……」
 自分の全身を濡らす液体を見直して、インプレッサもバツの悪そうな顔になっていた。
 丁度その時だ。

 コマルダ――ッ!

 周囲に聞き慣れた鳴き声が響く。
 続いて、

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 周囲を地鳴りが襲う。
「な、なに!?」
「地震!?」
 そして。

 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!

 地面を突き破り、ガソリンタンクコマルダーが姿を現したのだ。
 インプレッサが目を見開いて叫ぶ。
「コマルダー!」
<コマ〜ルダ〜!>
 そんな彼らの目の前で、ガソリンタンクコマルダーは近くを走っていたタンクローリーにパイプの腕を伸ばしたのだ。
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! ば、化け物!」
 驚いた運転手は、タンクローリーから飛び降りて一目散に逃げ出す。
 ガソリンタンクコマルダーは運転手に構うことなく、タンクローリーのタンクに腕を突き刺し、中のガソリンを吸い出す。
<コマルダ〜!>
「あいつ、ガソリンを吸い取ってるぞ!」
 タクヤがコマルダーを指さして叫んだ。
「そうか、東京中のガソリンが消えたのは、ムボウデーンの仕業だったんだな!」
「ふははははははははは! その通りだ、ヒカリアン共!」
 カウンタックの叫び声に応じるように、デコトランが姿を現した。
「ムボウデーン!」
 デコトランはいつになく輝いた顔をしていた。
 何せ、ここまで長期間ヒカリアン達に気づかれる事無く作戦を遂行できたのは、今回がほぼ初めてだからだ。
「今頃気づいても後の祭りよ。もはや東京のガソリンは我らの手中にある。貴様らは燃料切れで、我らの前にひざまずくのだ。だが、土下座して我らを拝み倒し、ついでに背中に『私達は犬です』と書いたのぼりを背負った上で三回回って『ワン!』と鳴くな らガソリンを分けてやらんでもないぞ?」
「これはいける」とふんだのか、デコトランはかなり饒舌になっている。
 見れば表情も恍惚とした物になっていた。
 ヒカリアン達の方は、逆に一瞬ポカンとした表情になるが、すぐにデコトランの言葉を頭の中で整理する。
「ふざけるなよ、誰が!」
 激昂したインプレッサが、エンジンガンを取り出す。
 しかし、デコトランは更に笑みを強くして言った。
「おお〜っと。いいのかなー、そんな物使って。今、コマルダーのボディにはガソリンがた〜っぷり詰まってるんだぞ。そんなコマルダーにお前の火炎銃なんて撃ち込めば……どうなるか分かるよな?」
「くっ……」
 インプレッサは悔しそうに唇を噛む。  自分の武器がどのような事態を引き起こすか理解したらしい。
「勿論、『ドッカ――ン!』だ。この町なんて、簡単に吹き飛ぶだろうなぁ。それでも良いなら撃ってみな。どうだ、撃てないだろ。ほらほら、バーカバーカ。お尻ペンペ〜ン、だ」
 デコトランはアカンベーをした挙げ句、お尻をペンペンと叩いてインプレッサを挑発した。
「この野郎、言わせておけば……」
 インプレッサはこれ以上無いくらい真っ赤になっていた。
 その赤さと言ったら、カウンタックにも匹敵するほどだ。
 こめかみはクッキリと浮き出て、歯はひび割れるほどギシギシと鳴っている。
 怒りがグツグツと音を立てて沸騰していた。
 逆にデコトランの方は清々しいほどの笑みを浮かべ、状況を楽しんでいる。
 コマルダーを攻撃できないという点では、カウンタックも同じである。
 彼の武器は電気エネルギーを発射するガルライフルだ。
 もし小さな火花でも起きてしまえば、やはり大爆発は免れない。
「あんまり怒ると燃料を早く使うぞ。じゃ、オレ達はもう行くが、変な邪魔なんか考えないようにな。バーイビー♪」
 デコトランとコマルダーは、悠々とその場から立ち去っていく。
 しかし、それを黙って見過ごす訳にもいかない。
「インプレッサ、ラングラー。奴らを追うぞ!」
「了解!」
「うん!」
 カウンタックを先頭に、ヒカリアン達もコマルダーの後を追っていった。
「あ、待ってよみんな!」
 タクヤとミズキも、ヒカリアン達を追いかける。
 後には燃料を吸い取られたタンクローリーが残されていた。
 そこへ……。

 ピカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!

 雲の間から、一つの光の塊が飛来する。

 他方、コマルダーとデコトランは、海辺にあった備蓄施設に到達していた。
<コマルダー!>
 そのままコマルダーは、施設の石油も飲み干してしまう。
 ヒカリアン達が駆けつけた時には、施設のガソリンは吸い尽くされてしまった後であった。
「ようし、コマルダーよ。次はあれだ」
 デコトランは海上を指さす。
 そこにあった物は……。
「あのコマルダー、どこへ行く気なんだ!?」
 ラングラーが、海に足を踏み入れかけているコマルダーを見て、怪訝そうな顔をして言う。
 ふと海上を見たインプレッサが気づいたように叫んだ。
「あれだよ! オイルタンカーだ!」
「大変だ! 襲われたら海は原油で汚染されちまうぞ!」
「何とか止めなければ!」
「でもどうやって……!?」
 良い作戦も浮かばず、ヒカリアン達は半ば絶望しかけていた。
 さらに、

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 コマルダーが口から火炎を吐き出してきたのだ。
 勿論吸い取ったガソリンを利用した攻撃である。
「こいつ、飛び道具もあるのか!?」
 こちらからは攻撃が出来ない。
 さらに向こうには強力な攻撃手段まである。
 まさに万事休すであった。
 しかし、運命は彼らを見捨てては居なかったのだ。
「諦めては駄目です!」
「!?」
 上空から声がする。
 見上げた一同の目に入ったのは、先程コマルダーに襲われたタンクローリーをボディとしたと思しき、一人のヒカリアンであった。
 背中には、タンクローリーのタンクを象ったユニットが付いている。
「特車隊タンクローリー、只今参上!」
「タンク技師長!」
「ここは私に任せてください! エナジー・トランスレイト!」
 言うなり、タンクの手から虹色の光線がコマルダーに向けて照射される。

 パァァァァァァァァァァァァァァッ……

 その光線を受けるなり、コマルダーの様子に変かが現れる。
<コマルダ〜……>
 みるみるうちに力が抜けていくように見えた。
 デコトランの目が驚愕のために見開かれる。
「き、貴様! 一体何をした!?」
 驚きの表情を浮かべるデコトランとは対照的に、タンクはニッコリと笑って言った。
「あなた方が奪ってきたガソリンを、残らず元の場所に返させて貰っただけです。インプレッサ、仕上げの方はお願いしますよ」
「よ〜し……」
 インプレッサはエンジンガンを構える。
「エンジンガン、エンジン全開!」

 ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン!

 銃の本体が振動を始め、銃口に赤いエネルギーが集まっていく。
 その内に、銃口には火がともっていた。
「ファイヤー・ストライク!」
 インプレッサがトリガーを引くと同時に、エンジンガンから炎のエネルギーが発射された。

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 巨大な炎は渦を巻き、コマルダーを包み込む。
<コマッタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!>

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 コマルダーの悲鳴が響き、大爆発が巻き起こった。
 爆発に巻き込まれたデコトランも、空高く飛んでいく。
「くそーっ、覚えてろよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 キラン!

 叫び声が小さくなっていき、デコトランは真昼のお星様と化したのだった。

 そして、その次の日曜日。
 タクヤ達はヒカリアン達と一緒に、近くの山へハイキングに出かけていた。
 インプレッサは大きくのびをして、山の空気を胸一杯に吸っている。
「空気が美味しいなぁ。ガソリンが無くなると困るけど、こういう自然も大事だよね」
「そうだね」
「そんな自然を守っていくのも、私達の仕事だな」
 一同は口々にそんな事を言いながら、草の上にシートを広げる。
 今日は絶好のハイキング日和であった。

To be continued.


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