きっちょむさん


                    ☆

 村の人達は、いつもきっちょむさんに酷い目に遭うので、今度は困らせてやろうと相談をしていました。
「きっちょむさん、お前さん大変知恵があるそうだが、百両あげるからあそこの山をここまで持って来てくれまいかね」
「お安い御用だよ」
 と、きっちょむさんは答えました。
 きっちょむさんは、さっそくわらの束を抱えて村中の家の前に積み重ねて歩きました。
「おいおい、きっちょむさん、そんな事してどうするつもりなんだね」
 みんなはびっくりしました。
 きっちょむさんはすまして言いました。
「あの山を持って来るのにはこの辺りの家が邪魔だから、火をつけて焼け野原にするのさ」
 村人たちは大慌てで、百両を差し出して謝りました。
「さあ、これで山はもう持って来なくてもいいよ」
 こうしてきっちょむさんは、ちゃっかり百両を儲けました。



おしまい


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