はちどり


                    ☆

 むかし、あるところに、年取ったお母さんと四人の子供がいました。
 ある日、お母さんは子供を集めて、
「お前達は大きくなったのだから、めいめい仕事を探してごらん」
 と言いました。
 すると、一番上のコルコルが、
「僕は山奥の森へ行って、昼間は眠り、夜になったら食べ物を探すよ」
 と答えました。次のレチューサは、
「あたしはお墓の側に住んで、お腹がすいたら食べ物を探すわ」
 といい、三番目のアラーニャは、
「あたしは素敵な糸をつむぐわ」
 と答えました。
「ピカフロル、お前はどうだね」
 お母さんが、末の息子のピカフロルに訊くと、
「僕はお母さんの側にいて、お世話をしながら働きます」
 と、にっこり笑って言いました。
 それからしばらくたつと、お母さんは重い病気になりました。
 ピカフロルはとても心配して、急いで森に居るコルコルに会いました。
「兄さん、帰って来て下さい」
「昼間から出かけるなんて嫌だよ。眠くてたまらないんだ」
 ピカフロルは悲しくなりました。そこで、お墓の側にいるレチューサの所へ行きました。
「これから、髪の手入れをするし、お天気も悪いから嫌よ」
 困ったピカフロルは、アラーニャに会いに行きました。
「はたを織り始めたから、だめよ」
 三人とも家に帰りません。お母さんは、この話を聞いて泣きました。
「お前たち四人は、神様の罰やお恵みを受けるよ。コルコルは人から隠れて、森の中で暮らすし、レチューサは醜くなってみんなから怖がられる。また、アラーニャの紡いだ糸は、誰も喜ばない。でも、ピカフロルはみんなに好かれるだろうよ」
 お母さんが死にました。すると、神様は、四人を鳥や虫に変えました。
 コルコルは大きなミミズクになって、いつも人から隠れて、森の暗闇で暮らしました。
 レチューサは醜いフクロウになり、レチューサを見た人は怖くて逃げました。
 また、アラーニャはせっせと糸を紡ぎましたが、その糸はクモの糸なので、誰からも喜ばれません。
 さて、ピカフロルは何になったでしょう。百合や風鈴草の上を飛び回って、甘い蜜を吸っています。
 そうです。ピカフロルは赤い喉をした、可愛い、ハチドリになったのです。





おしまい


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