脱出! 地下迷宮!

 どこの国でも酒場だけは変わらない。
 笑いや怒声が飛び交い、独特の喧騒がその場を支配する。
 ここ、パライソの裏通りにある『バリ・ハイ』もそんな喧噪のある酒場だった。
 男が、女が、酒に酔い、意味のないバカ騒ぎを繰り返している。
 まるで昼間のうっぷんを晴らすかのように。
 テーブルの一つで、明らかに酒に酔った一人の男がいきなり立ち上がり、周囲の人間に向かって演説を始めた。
「市民諸君、この国は今のままで良いのか!? 昨今の暴政はいい加減もう我慢出来ん!」
「そうだ、そうだ!」
 賛意を示す声が一斉に上がる。
「経済はどん詰まり! 税金は上がり、食糧は満足に行き渡らない! こんな国に誰がしたんだ!」
「宰相のルグーン・カヴァールニィだ!」
「いやいや無能者のゴーク王だ!」
 一人の男の投げかけた波紋は今や酒場全体に広がっていた。
「この際、全ての膿を出し切ってこの国を新たに生まれ変えねばならないっ!」
「異議なしっ!」
「賛成だ!」
 酒場中に拍手が広がり、人々の興奮が最高潮に達した時だった。

 バタンッ!

 いきなり酒場のドアが開いて、武装した憲兵隊が飛び込んできた。
「不敬罪、政府反逆罪、および暴動を扇動した罪で全員逮捕する!」
 どうやら誰かが当局に通報したらしかった。
 某酒場で政府の批判が叫ばれている――これだけで、今のこの国では十分罪になるのだ。
 酒場の中は大騒ぎになった。
 逃げ出す者、憲兵につかみかかる者。
 憲兵の方も容赦はしない。
 剣を振り回して逆らう者たちに斬りかかっていく。
 そんな中、ある二人連れが裏口からスッと抜け出していった。
 途中憲兵の一人が気づいて取り押さえようとしたが、赤髪の少年の拳の一撃で気絶してしまった。
 この二人はジンとバッツだった。
「どうやらこの国は腐っているらしいな」
「そろそろ時間ですよ、バッツ」
 酒場を出た二人は裏通りを駆けて行った。

 細い路地を抜け、ジンとバッツは暗い階段を降りて行った。
 この辺りは完全なスラム街で、街でも最も危険な場所と言われている所だ。
 階段の下には小さな扉がある。
 コンコン……と扉を叩いてバッツが小声で言った。
「おれ達だ」
 スッと音もなく扉が開く。
 二人は中に入っていった。
「お帰り」
 中には一体いくつなのか見当もつかないほどしわだらけの老婆が待っていた。
 歯が一本も無い口で、
「ヒッヒッヒッ……」
 と気味の悪い笑い声を発する。
 部屋には他に、ザコ吉とセレナもいた。
 バッツたちの誰もこの老婆の名を知らなかった。
 ただ一つ分かっていることがある。
 それはこの老婆が腕利きの情報屋という事だ。
 そして、金さえ積めばどんな情報すら仕入れることが出来た。
「わかったかい、婆さん」
「あんたらの探している坊主は地下迷宮に落とされたらしいよ」
「地下迷宮!?」
「代々ヘブンズ家に害なす者たちを追放した王宮の地下にある迷路だよ。今までに生きて帰って来た者はいないって言う話だよ」
「ルストがそんなところに……」
 クッとジンが顔をゆがませた。
「そんな……。こうしてはいられません! ルスト様、すぐにお助けします!」
「って、ちょっと、セレナ!」
 ザコ吉達が止めるのも聞かず、セレナはあっと言う間に部屋から駆け出していってしまった。
「くっ、バカが……婆さん、その地下迷宮に入り込む道ってのはあるのか?」
 バッツの問いかけに老婆は「ヒッヒッヒッ……」と笑うだけだ。
 いきなりドンッとバッツが布袋を床に投げ出した。

 チャリ、チャリィィィン……

 布袋の口ヒモが解け、床に金貨が転がる。
 それを見て老婆は笑みをますます強くした。
「入口はあるよ。この街の下水は古い時代からいくつも掘られていてね、今じゃ迷路のようになっているのさ。その一つが偶然地下迷宮に繋がっている」
「そいつを教えてくれ!」
「下水の地図は少々値が張るよ」
「ちぇっ、強欲なババアだぜ!」
「毎度あり」
 老婆が例の笑い声を部屋中に響かせた。

 同じ時刻――
 様々な機械が並び、さながらマッドサイエンティストの実験室と化している部屋の中にルグーン・カヴァールニィはいた。
 その顔には、自然と笑みが浮かんでいる。
 自身に絶対の自信を持っている者の笑みだった。
「ふふふ……もうすぐだ……。もうすぐ全てがオレの物となるのだ……」
 一層笑みを強くするルグーンだったが、ふと思い出したように、
「そのためには、奴らを確実に始末せねばならんな……。邪魔者には全て消えてもらう……。ふふふ、これがオレの方針だ」
 ルグーンは成功を確信した顔つきで呟いた。
 彼の自室に、傲慢な笑い声が響き渡った。


「だれっ!?」
 光が間近に迫った時、ルストは思い切って声を出した。
 ピタッと足音が止まる。
 代わりに聞こえてきたのは快活な老人の声だった。
「こりゃ驚いた! また随分めんこい坊主が落とされたものじゃ!」
 光の中に現れたのは、小柄な人物だった。
 単眼が描かれた奇怪な仮面をかぶっている。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 光に照らされて、より一層不気味に見える仮面に、思わずルストが悲鳴を上げる。
「おっと、驚かせたようじゃのう。すまんすまん!」
 そう言いながら仮面をとると、そこから現れたのは愛嬌のある顔だった。
 耳がとがっている所を見ると、どうやら魔族らしい。
 老人の顔には不思議と人を安心させる何かがあった。
 瞬時に、この人は信用できる――とルストは確信していた。
「あなたは……?」
「メフィス・ファウストっちゅうジジイじゃよ。前にこの国で国王の相談役をやっとったダークプリーストじゃ」
 気さくな感じで、メフィスと名乗る老人は言った。
 ダークプリーストとは読んで字のごとく、闇の神に仕える聖職者である。
 ここで説明しておかねばなるまい。
 トゥエクラニフにおける“闇”の扱いは、我々が住むこちらの世界とは少しばかり違うのだ。
 というのも、トゥエクラニフでは闇や光も、自然の構成要素の一つとしか考えられていないのである。
 闇は主に、安らかな眠りを与えてくれる夜の象徴だと考えられている。
 つまり、水や火などと同じく「過剰にあれば困るが、生きていくには必要なもの」と考えられており、「闇=邪悪」といったニュアンスは全く無いのだ。
 ちなみに邪悪な神は、文字通り「邪神」と呼ばれている。
「おれはルスト。魔王レッサルゴルバ様を浄化するために、仲間達と旅をしてたんだけど……」
「おおかた、ルグーンのハゲ親父に、問答無用でここに落とされたんじゃろ」
「当たってる……」
「あいつのやりそうな事じゃ。わしはあのハゲ親父のやる事にことごとく反対しての。とうとうここに落とされてしまったというわけじゃよ」
「へ〜え……」
 ニコニコ笑っている老人の顔を見ている内に、ルストはこの地下迷宮に落とされて初めて心に安らぎを覚えていた。
 途端に――

 グゥゥ〜……

 お腹が大きく鳴って、ルストは顔を赤らめた。
「かっかっかっ! どうやら腹が減ってるらしいのう。ついてこいや」
「は、はい」
 メフィスのあとをルストはゆっくりと歩き出した。

 香ばしいニオイが流れてくる。

 パチパチパチパチッ……

 勢いよく火が燃え、そこには串に通された肉の塊がいくつかかかっていた。
「ほら、食え」
 焼けた肉をメフィスがルストに放り投げる。
 それを受け取りながらもルストはそれを口に持って行くのを躊躇していた。
 この肉の正体を知っていればそれは仕方のないことかも知れない。
 メフィスの住処とも言うべきこの場所に来るまでに、メフィスはあちこち立ち寄った。
 そこには簡単な罠が作られており、大きなネズミが何匹かかかっていた。
 それがこの肉の正体である。
「なんじゃ、食べんのか? 味はそう良くないがちゃんと食べられるぞ!」
「は、はあ……」
 ルストは思い切ってそれを口に持って行った。
「…………」
 なるほど食べられる。
 お世辞にも美味しいとは言えないが。
「そうそう食わにゃあかんぞ! まずはともかく生き延びる事を考えにゃあかん。わしなどこの地下迷宮に落とされて、もう二年も暮らしておる」
「二年も……!?」
「かっかっかっ! 人間いざとなればどこでだって生きていけるぞ!」
 メフィスが豪快に笑った。
 が、ルストは複雑な表情でメフィスを見つめている。
「どうしたんじゃ?」
「メフィスさん、二年もここにいるって……じゃあ、ここから抜け出す方法は無いの!?」
「それなんじゃが……」
 さすがのメフィスの顔にも暗い翳がよぎる。
「ここの迷宮は広くてのう……。二年かかってもほとんど何も分かってないのが実状じゃよ」
「そんなぁ……」
 ルストはガックリと肩を落とした。
 そんなルストを慰めるようにメフィスが言った。
「生きることじゃ。運が良ければ新たな道が開ける」
「ん……」
 力なくルストは肉を口にした。

 食事が終わり、そろそろ二人が休もうとした時だ。
 いきなり二人の背後に影が迫る。

 シャキィィィィィィィィィィィィィィィィン!

「えっ?」
「なんと!?」
 とっさにルストはメフィス共々横倒しになった。
 今まで二人がいた空間を白刃が通り過ぎていく。
 鋼鉄の仮面をつけた黒装束の男たちがルスト達の背後に集まっていた。
「だ、だれ!?」
「暗殺団(アサシン)じゃ! ルグーンの!」
「ええっ!?」
 アサシンたちはゆっくりとルスト達を取り囲み始めた。


 セレナはこっそりと王宮に忍び込んでいた。
 まだ朝も早い時間で、城内にもそこまで人影はない。
 こういう時、空を飛べるセイレーンの能力は便利だった。
 セレナの目的は勿論ルストの救出だったが、それ以上にルストに逢いたいという意思があった。
「ルスト様、待ってて下さい! 今セレナがお助けいたします!」
 セレナは辺りを伺いながら、誰もいない廊下を駆け抜けていった。

 が、ヘブンズ城には全然詳しくないセレナは、すぐに道に迷ってしまう。
「えっと、えっと……」
 建物を抜け出したセレナは中庭に迷い込んでいた。
「地下にはどうやったら行けるのかしら……?」
 闇雲に中庭の木々の間を進んでいく。
 急に視界が開け、セレナは小さな建物の前に飛び出していた。
「誰だ!?」
 声を掛けられ、ビクッとしてセレナはそちらを振り向いた。
 立っていたのはジョードだ。
 横にはフレイルの姿も見える。
「あっ!」
「あんたは……」
 フレイルの姿を認めると、セレナは慌ててその場を逃げ出そうとする。
「待ちなさい」
 そんなセレナの肩をつかんだのはジョードだった。
「離して! 離して下さい! 私はルスト様のもとに行かなければいけないんです!」
「ルスト様……?」
「地下迷宮に落とされた例の光騎士ジャン、王子殿下」
「えっ、王子殿下!?」
 フレイルの呼びかけを聞き、セレナは改めてジョードを見た。
 セレナを見るジョードの瞳はどこか暖かだ。
 セレナはとっさにうやうやしく礼をして言った。
「ジョード王子殿下、初めまして。セイレーンのセレナと申します」
「……ようこそ、我がヘブンズ王国へ、セレナ殿。ルグーンのせいで随分と苦労させてしまったようだな」
「えっ……!?」
 ジョードの言葉に、真に謝罪の気持ちが含まれていることをセレナは感じていた。
「フレイル」
 ジョードはフレイル方に向き直って言った。
「セレナ殿を地下迷宮に連れて行ってあげなさい」
「殿下!?」
「ルグーンに対するささやかな反抗だよ……。これを持って行け」
 ジョードはフレイルに自分のはめていた指輪を手渡した。
「これがあればいざとなったら、地下迷宮の中でも迷わずに済む。何せあそこは緊急時の王族の避難場所にもなっていたからな」
「はっ」
 指輪を受け取ると、フレイルはセレナの手を引いて歩き出した。
「殿下、有難う御座います」
 深々と頭を下げるセレナを、ジョードは優しい瞳で見つめ、頷いた。

 一方、全く別の場所でも地下迷宮に向かう者たちがいた。
「くせえな、ここは……」
 バッツが渋い顔をする。
「下水ですからね。当たり前ですよ」
 先を歩くジンがにべもなく言った。
 ジン達は、情報屋の老婆から聞いた下水の道を、地下迷宮に向かっていた。
 ジンの手には細かく下水道の経路が書かれた地図が握られている。
「ったく、あのババア、足元見やがって! おかげで貯金がパーだぜ」
「ルストのためなら惜しくありませんよ」
「そうそう」
 軽口を叩く間も三人の歩みは止まらない、
「……ここです」
 地図を確認して、ジンは下水道の一角で立ち止まった。
 そこには狭い横穴がある。
「ここに入れってか」
 バッツがぎりぎり入れるくらいの広さだ。
 三人は身を縮めて、その横穴に潜り込んだ。
「狭いぜ……」
「黙ってついてこい!」
 小柄なザコ吉はスルスルと先へ進んでいく。
 ニ〇分ほど横穴を進み、ようやく三人は窮屈さから解放された。
 そこは真っ暗な空間だ。
「どうやらここが地下迷宮らしいですね」
「そのようだぜ! お客さんがおいでだ」
 ニンマリと笑うバッツの視線の先にはぼうっと真っ赤な目が輝いている。
 それも無数に。

 ガルゥゥゥゥ……

「ヘルハウンド!」
 ジンの叫びとほぼ同時に獰猛な唸り声をあげて、巨大な真っ黒な犬が飛びかかって来る。

 ザシュッ!

 そいつはバッツの剣によって首と胴が真っ二つに分断された。
 バッツのシニカルな笑みが強くなる。
「さぁてと、面白くなってきやがったぜ!」
「ホントに困った性分だね」
 そう言うザコ吉の口元にも笑みが浮かんでいた。


「ルスト、目をつぶるんじゃ!」
 メフィスの叫びに、ルストは訳も分からず目を閉じた。
 暗殺者(アサシン)に囲まれ、目を閉じるなど正気の沙汰ではない。
 だが、メフィスの声には有無を言わさぬ説得力があった。
「ほれっ!」
 メフィスが懐から何かを取り出し、床に叩きつけた。

 バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 それは強力な発光弾だった。
「うぐっ……」
 暗殺者たちは目をやられ、思わず顔を覆う。
「こっちじゃ、ルスト!」
 メフィスはルストの手を引いて駆け出していた。
「すごい! あんな武器を持ってたなんて!」
「カッカッカッカッ! ここは何でもそろうぞ! 落とされた奴らの中には軍人や暗殺者も多くいたからの!」
「……はあ」
「こっちじゃ!」
 メフィスは勝手知ったるとばかり、迷宮の複雑な小径を走っていく。

 シャッ!

「危ない!」
 殺気を感じ、ルストはメフィスの手を引いた。
 メフィスがいた空間をナイフが通り過ぎていった。
「ありゃりゃ、もう来おったか!」
 背後を見たメフィスは暗殺者たちが駆けつけてくるのを見た。
「やっぱりこの松明がいかんかったようじゃの。けど、明かりが無いとわしらは逃げられんしのう」
「なにのんきに言ってるんですか!」
「おっと、こっちじゃよ、ルスト!」
 メフィスは突き当りの道を左に曲がり、曲がり際、壁に立てかけてあった棒を引っ張った。
 それが何なのか、次の瞬間すぐわかった。

 ドガッ! ドシィィィィィィン!

 天井から大きな石が落ちてきて、三人ほどがまともに頭に受けてその場にうずくまった。
「次はこっちじゃ! そこは壁に沿って走れ!」
「は、はい!」
 メフィスが今度は壁にかけてあったロープを引っ張った。
 追いすがる暗殺者たちの足元でいきなりピーンとロープが張られる。

 ドギュッ! ドシュッ!

「ぐわっ……!」
 走っていた先頭の二人が倒れ込み、ちょうど倒れ込んだところには剣が刃を上に向けて突き出ていたのだ。
 暗殺者の数はすでに半分に減っていた。
「すごい!」
「こんなこともあるかと思って、いろいろ作っておいたのじゃが、役に立ったようじゃな」
「でもまだ来ますよ!」
「う〜ん……実はネタ切れじゃ」
「ええっ!」
 ルストとメフィスは通路を右に折れていく。
「あやや、しまった!」
 そこは行き止まりであった。
「わしとしたことが、道を一本間違えた!」
「えっ!?」
 戻ろうにももう背後には残りの暗殺者たちが迫ってきている。
「メフィスさん、さっきの発光弾は!?」
「奴らもプロじゃ。二度も同じ手は効かんじゃろ」
「じゃあ、どうしたら……」
「ルスト」
 メフィスはニッコリ笑って松明をルストに手渡した。
「えっ!?」
「ここはわしが何とかするから、その間にお前さんは逃げるんじゃ」
「何とかって……相手は五人もいますよ!」
「なに、わしとてダークプリーストの端くれ! まだまだ若い奴らには負けぬわ!」
「それならおれも!」
 腰のブレイブセイバーを抜こうとするルストを、メフィスが手で制する。
「ルスト、お前さんには使命があるんじゃろ!」
「でも!」
「お前は逃げるんじゃぞ!」
「メフィスさん、だめぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 メフィスがモーニングスターを取り出して暗殺者たち目がけて駆け出した時だった。
「ルスト様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 間近からセレナの声が響いてくる。
「えっ!? セレナ?」

 ジャキィィィッ!

 明かりが見えたかと思うと、白刃が煌めき、暗殺者の一人が床に転がった。
「メフィス爺さん!」
「おおっ、フレイル!」
 暗殺者を斬って捨てたのはフレイルだった。
 すぐ後ろにはセレナもいる。
「フレイル、油断するでないぞ!」
「セレナ、下がって!」
 暗殺者たちは全員ルストとフレイルの方に向き直った。
 どうやら、先に手強い相手から片付けようという魂胆らしかった。
 二人がいくら腕が立つと言っても、暗殺のプロ四人相手はかなり荷が重い。
 が、どうやら心配は無用なようだった。

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

「ぐわぁぁぁぁっ!」
 爆裂呪文の光球が飛び、暗殺者の一人が爆発を喰らってその場に倒れた。
「ルスト、お待たせしました!」
 暗がりの中に立っていたのはジンだ。
「ジン!」
「おれ達もいるぜ!」
 猛然とバッツが突進してきて、剣を思いっきり振り回した。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 ジャキッ! ドシュッ! ドシュッ!

 何という膂力か。
 バッツの剣は残った三人の暗殺者の胴を見事に切断していたのだった。

To be continued.


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