〜僧侶の隠語〜

汐莉「ふわぁ〜……。おはよう、くれちゃん……」

くれは「お早う御座います、汐莉。今日の朝ご飯はサラダと『御所車』のサンドイッチですよ」

汐莉「……御所車? なにそれ?」

くれは「あはは、卵の事です。昔のお坊さんの隠語ですよ」

汐莉「ふ〜ん?」

くれは「江戸時代、殺生を禁じられていたお坊さんは生ものを食べる事が出来ませんでしたけれど、
実際には“生ぐさ坊主”がいたのも事実で、これらは隠語で呼ばれていました」

汐莉「例えば?」

くれは「例えば『大僧正』といえばイワシの事で、これはイワシの色が大僧正の紫の衣を連想させるからなんだそうです。
それからさっきの卵ですが、これはちょっと洒落ていて、中に“黄身”、つまり“公(きみ)”がおわすので、という事です」

汐莉「へぇ〜、なかなか面白いわね」

くれは「他にはカツオ節は“恋文”と呼ばれていました。これは『どちらも人目を忍んで“かく”』からなんだそうです。
その他、酒は般若湯、ドジョウは踊り子、アワビは伏せ鉦(しょう)、タコは天蓋、鮎はカミソリなどと呼ばれていました」

汐莉「……なんか、お坊さんって意外とフリーダムだったのね……」

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