〜カルテ〜

アカサカ「よぉ、ノックアウト。珍しいな、お前がウチに本を買いに来るなんて」

ノックアウト「ああ、店長さん。いえね、そろそろ本格的に、生身の生物の勉強もした方が良いかと思いましてね」

アカサカ「あー、成程なぁ。……ところで、お前、それ高校の生物の教科書だぞ」

ノックアウト「ときに店長さん、何故医者はカルテをドイツ語や英語で書くかご存知ですか?」

アカサカ「うんにゃ」

ノックアウト「結論から言ってしまえば、日本語による医学用語は漢字も読みも非常に難しいから、なのです」

アカサカ「ふ〜ん?」

ノックアウト「そもそもカルテには、熱や頭痛などの症状、医者による問診の答え、患者が訴えた容態といった内容に加え、
その診察結果や処方した薬なども書き込まれる訳です。
しかも、このような内容は診察しながら書き込まなくてはならないのですから、
簡単で早く明確に表記できる言葉の方が適している訳です」

アカサカ「成程ね」

ノックアウト「そこで、専門用語である医学用語が使われるのです。しかし、日本語の医学用語と言うのは、概ね非常に漢字も読み方も難解な物が多くあるんです。
例えば虫歯は『齲歯(うし)』、くしゃみは『噴嚏(ふんてい)』、そして『急性耳下腺炎』というのは『おたふくかぜ』の事だったりします」

アカサカ「ややこしいな……」

ノックアウト「こんな具合に日本語の医学用語が難解なので、医者はカルテにドイツ語や英語を使用する訳です。
どちらも表音文字ですから、急いで書いたりするにはとても便利な言葉なのです」

アカサカ「ほ〜う」

ノックアウト「ところで、カルテに外国語を使う理由は他にもあります、それは、医者が見たり問診したりして診断した病気や怪我の内容を、
あまりはっきりと患者に知られたくない、という場合に都合が良いから、という点です」

アカサカ「……まさかお前、それで適当な事書いてないだろうな……」

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